ボルボックス2021秋

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ボルボックス。

 

おもえばずいぶん前から培養を試行錯誤していました。

 

2018年に出版した『鉱物のテラリウム・レシピ』のページをめくってみると、ボルボックスは二層培地で紹介していますね。

 

その前には、都市伝説的な「ボルボックスにはボルヴィック」というのを何年か試していました。この時には再び二層培地に戻っていたようです。

 

今はまた、土は使わない培養に戻りました。

 

ボルボックスは群体です。一層に並んだ体細胞がそれぞれ2本の鞭毛をもち、光に向かって回転しながら移動をします。

体細胞は内部に、核と葉緑体とピレノイドと眼点を持ちます。眼点で光を感じているというわけですね。

娘細胞(娘群体)と呼ばれるのは生殖細胞、いわば「子ボル」。

子ボルは親の群体中でつくられます。

 

子ボルができた時にはすでにその中に子ボルの元となる細胞があり、子ボルは、親群体の中で分裂して成長し、同時に小さな子ボルをつくります。

このとき、子ボルの子ボルはまだ子ボルの球面に並んでいます。

やがて、靴下を裏返しに脱ぐみたいに、反転します。インバージョン(inversion:反転)といいます。これで完成!

 

完成した子ボルはもうそれ以上、細胞の数が増えることはありません。

 

細胞の間に寒天質がたまって、細胞間の距離が大きくなり、子ボルはやがて親と同じサイズになります。

親の体細胞を溶かす酵素を出して、外へ泳ぎだします。

親の体細胞はバラバラになってもしばらくは動いていますが、細胞分裂をすることはなく、やがて死んでいきます。

 

ボルボックス/きらら舎

 

・・・・・と、これがボルボックスの無性生殖なんですが、有性生殖もするんです。

条件によって有性群体が出現します。

有性群体には雌雄同体の場合もあるみたいです。

もちろん雌雄異体の場合もあります。

それらは種によって異なるそうです。

雌雄同体の有性群体は10~100 個以上の卵と数個の精子束を同時にもち、雌雄異体の有性群体は卵と精子束を別々にもちます。

 

精子束と呼ばれる精子の群体となって泳ぎだした精子は、卵に出会うとばらばらになり、受精します。

その後、受精卵(ボルボックスの場合は接合子と呼ばれます)は厚い壁をつくります。ミジンコの耐久卵のように、接合子は池や湖の底に沈み、環境が生育に適した状態になるまで休眠します。

 

この耐久卵(休眠卵)を採りたいなあと思っています。

 

それには無性生殖とは異なる特殊な有性群体が発達してくることが必要で、トリガーはヒートショックと書かれている論文もあり、酸化ストレスという論文もありました。

有性生殖を誘導する方法論を確立し、DNA配列による系統関係を基に種を分類し、日本産のボルボックスは2つの新種であることを解明した発表論文に

「 培養液中のバクテリアを排除し、酢酸ナトリウムを含む培地で25℃で培養することで雌雄同体の有性群体が誘導することを見いだした。」

とありました。

そこでまずは酢酸ナトリウム0.1gを溶かした500mlのボルヴィックに培養株をセットしてみました。

 

 

基本的にミジンコと同様、自然界では環境が悪くなれば発生するはずですが、多分環境が悪くなると全滅してしまう・・・・・

悩ましいところです。

これで有性群体ができたら、まずはいいなあと思います。

 

それと、もう一つ。

今までは無性生殖でできた娘群体が美しいものばかりに目を取られていましたが、底に溜まったものなどに、もしかしたら、有性群体が発生していないだろうかと。

これも合わせて、いろいろ観察してみたいと考えています。

 

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