ヤコウタケ

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ヤコウタケ

学名:Mycena chlorophos

 

 

 

5/11(土)

岩出菌類研究所からヤコウタケ栽培キットが届きました。

ちょうどカフェ営業日だったのと、同日、生まれたての蚕をいただいてしまって、やらねばならないことが盛りだくさんだったので、5/13(月)にセットしました。

 

 

 

5/21(火)

ここ数日で、容器内に急速に菌糸が伸びてきています。

 

 

 

しかし、菌糸とカビの区別はむずかしく・・・・・
カビかな。大丈夫かな・・・・・

 

 

カビみたいな中に米粒みたいなものもあり、どうやら幼菌のようです。

 

 

 

 

 

5/27(月)

ここ数日の気温上昇で、クーラーを入れたものの、ヤコウタケは急に大きくなってきました。

密集しているので、方向がよくわからなくなっています。

 

 

 

まだ光っていません。

 

 

5/28(火)

午前2時くらいから光っているのがよくわかるようになりました。

傘が開くと発光するようで、傘の表より裏側のほうがよく光っています。

 

少し暗いだけの部屋の隅でも発光がわかるようになってきました。

 

 

暗い所だとさらに顕著です。

 

 

5/29(水)

午前3時頃。まだ暗い中、たくさんの光が見えます。

 

もう少し明るい場所に移動しようと、暗い中持ち歩いたら、倒してしまいました!

 

そこで、そろそろ光が弱くなって萎れてきたキノコを採り、胞子紋採取のセットをしました。

 

 

すっきりした容器の中でも、まだ次々と育っています。

 

結局セットした傘は、すでに開いてから時間が経過していたので、胞子も落ちた後だったらしく、また、乾燥のスピードが速くて縮まってしまい、胞子紋が採れたのは1つだけでした。

 

スライドグラスの上にセットしておいたものは

うっすらと紋ができています。

 

胞子・・・・・ちょっと不思議な色です。このままモバイル顕微鏡用の永久プレパラートにします。

 

現在飼育容器の中の土に落ちている胞子。

うまく行けばそこから菌糸が伸びてきます。

種から芽がでるようなものですね。

ただ、この菌糸は一核菌糸というもので、これだけではキノコ(子実体)は生えません。いくつかの菌糸が出会い、融合して始めて二核菌糸となります。
何かトリガーがあって、子実体を出します。

結構奥深い・・・・・

すでに伸びている菌糸を大切にするほうが早そうです。

 

 

 

 

ヤコウタケはなぜ光る!?

昨年の博物ふぇすの自由研究テーマ(ガクモンからエンタメ☆)は「鉱物の蛍光・生物の発光」でした。そこでも説明を書きましたが、今回は実際のヤコウタケを観ながらおさらいをします。

苔・キノコの仲間で光るというと、ヒカリゴケが思い浮かぶかと思います。しかし、ヒカリゴケが光るのは、原糸体に存在する直径15μm程度の球状をしたレンズ状細胞が光を反射することで光ってみえるので、苔が自ら光を発しているわけではありません。暗い所に入ってきたわずかな光を反射させるので、その光が顕著に見えるだけなのです。またエメラルドグリーンに光っているように見えるのも、レンズ状細胞に存在する葉緑体の色が反映されているのです。

 

しかし、ヤコウタケは自らが発光していることが解明されています。

 

キノコが緑色に発光する原因物質は、名古屋大学 大場裕一先生のチームが、ロシア科学アカデミーのヨーゼフ・ギテルソン教授、イリヤ・ヤンポルスキー博士らのチームと共同で特定しました。

キノコの緑色発光は、「ヒスピジン」という物質と、光るキノコだけが持つ酵素が反応することで起こるそうです。ヒスジンはいろいろなキノコに含まれている物質で、最近では癌細胞を死滅させることで有名になりましたが、発光にも関わっていたのですね。

 

チームは八丈島に生息するヤコウタケを栽培し、すりつぶしてさまざまなキノコから採取した物質を混ぜる実験を4年間繰り返したそうです。その結果、エノキタケから抽出した「ヒスピジン」とヤコウタケをすり潰して得た液体に混ぜたところ、強い光を放つことが確認されました。

 

今朝、ヒスピジンについてLife is small. Company代表の白根さん(モバイル顕微鏡のお兄さん)に聞いてみました。

 

「ヒスピジンはルシフェリンの前駆体(ルシフェリンに変化する前の物質)です。

ヒスピジン→ルシフェリン→(ルシフェラーゼと結合)→発光 という仕組みです。

ルシフェラーゼがルシフェリンの化学結合を切るとエネルギーが解放されて発光します。」

 

結局、ルシフェリンとルシフェラーゼなのね。

 

ウミホタルを特別な方法で乾燥させた乾燥ウミホタルのように、なんとかヒスピジンと光るキノコの酵素を保存できたら、いろいろ楽しいのに・・・・・と思います。
楽しいだけではなく、オワンクラゲの蛍光タンパク質が医学・生理学の分野で幅広く利用されていることを考えると、ヤコウタケたちも、今後、その発光メカニズムが全容解明されたら、新たな応用技術の開発につながるかもしれないのです。

 

ヤコウタケは傘が開いてから光るし、

裏側のほうが光が強いし、

・・・・・もしかしたら、胞子紋(つまり胞子も)光るのかな・・・・・

 

 

人類のために光るキノコを研究(現在はゲノム解読が進められているらしい)している研究室とはまったく異世界の、生物・鉱物だらけの部屋で、小さなアクリルの箱に入れられたヤコウタケはひっそりと光っています。

 

アクリルの箱があじけないので、これからスノードームに入れてみようと思いますよ!!

 

Categories: 生物・植物室