秋のミズクラゲ

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2019月9月29日(日)

お台場のA.D.NÉELヴィーナスフォート店でワークショップを行ったので、その帰りに近くの海の探索をしました。

このことについては「お台場採集日記 #01」に記録しています。

きらら舎一号館のノートは、ブログ「天氣後報、天氣後報 II 」をひきついで記事を書いています。その中で、個人的な日記は常体にて独り言のように記録しているのですが、この中のミズクラゲについてみてくださっている方が多かったので、生物部カテゴリーにて「お台場採集日記 #01」の続きを書いていくことにしました。

 

飼育下のミズクラゲは飼育温度を10度下げて給餌を止めるとストロビレーションを始めます。

確実に日程を調整したい場合は明るさなども関係してくるのですが、クラゲを出してみたいだけであれば、この2つの条件を実行すればほぼ成功します。

 

自然界でもほぼ同じで、海水の温度が下がると海中のミズクラゲポリプは長く伸び始めて、赤く色づき、くびれができてやがてお花が重なったような形になり、そのお花が1つづつ拍動により遊離していきます。

この遊離したお花みたいなクラゲの赤ちゃんをエフィラ幼生といいます。

以前にまとめた記事はこちら  >>ミズクラゲ

 

以前の記事「ミズクラゲ」にも書いたように、ミズクラゲを飼育したいと思ったらプラヌラの状態を採取するのが一番よい方法です。

ミズクラゲは海水の温度が下がった冬にエフィラを出し、生まれたクラゲが成熟して春から夏にかけて有性生殖で受精卵ができ、プラヌラとなります。

一般には9月になっても、プラヌラを抱えているメスはいるものの、彼岸を過ぎるとどんどん死んでしまい、生きて越冬できる個体も沖のほうに移動してしまうので、接岸個体は珍しいといわれていましたが、9月29日にはプラヌラを抱えているような気がするクラゲをみつけました。

春から夏にかけてだと、浮いているクラゲを上からみただけで、プラヌラを抱えたメスであることがわかるのですが、今回は微妙でした。

おそらく、生まれたプラヌラの大半は海中に泳ぎ出てしまっていて、その残りがいただけに過ぎなかったのでしょう。

 

それでもバケツに逆さまにして入れて、内側をバシャバシャとして(粘液ドバー!でしたが)、その水を持ち帰りました。

わたしは小さなタッパにわずかもって来て、水の粘度がひどかったのと比重があまりにも低かったので、少しづつ通常比重の人工海水を加えて行きました。

飼育壜を光に翳すと何やら粒々が動いているのが見えます。

 

プラヌラ!?

 

その時にまず、動かないものを撮影しました。死んでいたのかもしれませんが、よく撮影することができました。

 

その後、動いているものがモバイル顕微鏡画面を横切ったのですが、速すぎて撮影なんてできません。

なんとか、水滴の量を減らして(動く範囲=追跡範囲 を狭める)、画面に捉えたものをスライドガラスを動かすことで追跡するという作戦で撮影ができました。

 

 

動画も撮りました。

 

 

採集から4日目。

水面や底に小さな小さなポリプらしきものが見えます。

水面のものをモバイル顕微鏡(500倍)で撮影しました。

 

触手も動いていて、ミズクラゲのポリプで間違いなさそうです。

丸の周りに突起が8つあります。

よく見るとそこから触手が伸びています。

 

200倍のモバイル顕微鏡でシャーレに入れたものを撮影しました。

左は、最初は卵割途中みたいな感じで(もちろん卵割じゃないのですが)粒の中に丸が4つ並んでいるような状態でした。今もまだ触手はあまり見えません。

右のものは触手が伸びています。

 

透過画像

 

観察用に直径9cmのシャーレに少し水をとりました。

明日以降は、飼育壜とシャーレの両方で観察を続けてみます。

 

 

以下、ネット上で公開されているいくつかの論文からのまとめです。

東京湾では以前より多くのミズクラゲの発生が確認されているようです。

少し古い研究結果ではありますが、2012年に発表されたものより

 

  • ポリプの成長は高水温・高塩分・高餌料濃度によって促進される(22℃で最も早い)
  • ポリプの増殖は高水温・高餌料濃度によって促進される(22℃以上で塩分が20psu※の飼育条件における個体数の増加が著しかったが、27℃の30psuでは若干低下した)
  • ポリプのストロビレーションの際のディスク数はポリプの大きさよって増加する
  • 秋季(特に10月)に着生したポリプは着生直後の死亡が少なく、その後出芽によって増殖する
  • 他の時期に着生したポリプは夏期の低塩分の影響や他の付着生物の侵入を受けて、着生直後から死亡が多かった
  • 低水温の冬季には生残個体のほぼ100%がストロビレーションを起こし、その大部分のポリプは1個体当たり1枚のデイスクを形成した。
  • 最終的にエフィラ幼生を生産したポリプは10月~4月に着生したポリプであり、最も多数のエフィラ幼生を遊離させたポリプは10月に着生したポリプであった。
  • 東京湾奥部でのエフィラ幼生の出現期は12月から翌年4月で、個体数密度は3月から4月にかけて最も高くなる
  • 10月以降は水温は20℃前後を保ち、塩分が20psuを下回ることはまれであるため、ポリプにとっては安定した海洋環境であると言える。したがってポリプの成長と出芽にとって最も適した時期は秋から初冬である。
  • 東京湾におけるポリプの寿命は1年未満
  • 東京湾におけるミズクラゲの主な産卵期は6~9月であるが、ポリプの生残・増殖に適する時期は10~12月

「大量発生につながるミズクラゲAurelia auritaのポリプの生長と増殖およびエフィラ幼生の生産に関する研究」著者/渡邊 朋子(東京水産大学)などより

 

※Practical Salinity Unitの略で海水の塩分を示す実用単位。34‰=34g/ι=PSU34。

 

ポリプその後

プラヌラはだいたい5日でポリプになり、12日で増殖を始めるといいます。お台場のプラヌラもだいたいそんな感じで無事にポリプ人生を歩み始めました。

しかしです!

鬼ポリプが出現しました。

もともとは入手元が違うミズクラゲポリプで鬼ポリプ実験準備をしていたのですが、こんなところで出会うとは!

ミズクラゲ/きらら舎

なんか伸びてる。

ミズクラゲ/きらら舎

鬼ポリプを出現させるには飢餓状態にすることが必要です。

しかし、お台場ポリプは増殖させたかったのでちゃんと餌をあげていました。しかしなぜこんなことになったのか。

多分、ポリプになる時に群体化したためだと思います。

通常ならば(海ならば)岩や海藻など、適当なところに着地してポリプになるところ、お互いを基質としてくっついてしまったものです。

ヒドロ虫綱ポリプであればストロンでつながっていて栄養分も共有できるのですが、ミズクラゲポリプは独立しているので、自分が摂った栄養は自分だけのもの。それが同じ場所にたくさん存在すれば、餌を捕獲できる確率は減ってしまいます。

それでちょっと腹ペコだったのか・・・・・

そして、何より、プラヌラ採集した時に、複数個体をバシャバシャしました。多分それらを混ぜて持ち帰りました。

それで違うDNAが混ざっていたようです。

面白いなと思うのは、もしかしたら、ですが、群体ポリプになる時には同じDNAでくっついているんじゃないかなってこと。

そして鬼ポリプは普通のポリプより赤っぽい気がします。

「喧嘩しないでね・・・・・」

ミズクラゲ/きらら舎

相手に伸ばした触手を切り離しておきました。

 

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