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ビスマスワークショップに参加される前に、自由研究としてある程度まとめておきましょう。
紙や冊子にまとめ、ワークショップで作った結晶を添えて提出してください。

ワークショップで作った結晶にラベルを添える場合は、虹色に「ビスマス人工結晶」、銀色は「ビスマス人工結晶(アルミイオン混入)」と書きます。そのほか、英名や原子記号などを書き添えます。

できるだけ大量のビスマスを融かせば、大きな結晶ができやすくなります。しかし、比重が水の約10倍ありますので、500ml分のビスマスでも5kg近くになるわけで・・・・・実際にご自宅で作るのは大変です。
また、『鉱物レシピ』や『遊べる鉱物図鑑』に掲載した作り方はそれほどたくさんのビスマスを使わずにできますが、カップの形のまま飾るようになります。

ビスマス鍋で引き揚げる方法は大き目な結晶を取り出せます。

 

(1)ビスマスについての基本データ

英名: bismuth

和名:蒼鉛(そうえん)

原子番号83の元素で、鉱物としてのビスマスは元素鉱物です。

元素記号は Bi

天然にもわずかですが産出します。しかし、人工結晶のような美しい光沢はありません。

天然ビスマスの写真は『遊べる鉱物図鑑』P42に掲載しています。

モース硬度 : 2~2.5
比重: 9.7~9.8
融点:271.5 °C

 

★ちょっと難しい話

これは以下の説明が理解できれば、気に入った内容をピックアップして、自分の言葉でまとめてみてください。
そのまま写すのではなく、ここを読んで、それをお母さんやお父さんにさらに説明してみます。そうすると自分の言葉になります。
また、あえて大人向けの説明となっていますので、難しい言葉は、お母さんやお父さんに、わかるように説明してもらってもいいかもしれません。

一般に「ビスマス」というと、虹色に輝く人工結晶をイメージする人のほうが多いと思います。実際にミネラルショーや鉱物店で販売されている「ビスマス」はドイツ製の人工結晶が大半を占めます。しかし、天然のビスマスもちゃんと存在します。考えてみれば当たり前のことなのですが、ビスマスだけでなく、金や銀や銅などの金属はまず天然の元素鉱物、あるいはそれを含む鉱石鉱物から製錬されます(※1)。

※1 人工鉱物はその用途のため高い純度が要求されます。そのため、いろいろな鉱物が製錬、生成されています。工業原料を取るための鉱物を鉱石鉱物といます。水晶や蛍石などは実際の天然鉱物を高温で融かして再結晶させたものです(ルビーなどは、ベルヌーイ法とよばれる人工合成法で作られます)。

 

ビスマスの和名は「蒼鉛(そうえん)」で、鉛という文字を含みますが鉛の化合物ではなく、鉛よりも重い元素鉱物です。これよりも重いものはウランとトリウム(いずれも放射性物質)しかありません。

さらに、ビスマスはヒ素グループに属します。元素周期表を見てみましょう(頑張って周期表を作ってみてもいいかもしれません。全部の元素を書くのが大変な場合は、ビスマスのある行(縦と横)だけを書けば、ビスマス元素の説明に足ります)
ヒ素グループは、この縦のグループ。上からN{窒素)、P(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)、そしてBi(ビスマス)と、並んでいます。ヒ素が有毒であることに説明は不要でしょう。その下のアンチモンは活版印刷の活字や様々な工業材料に用いられいましたが、近年その有害性が認められ代替材の開発が進んでいます。その中でのビスマスですが、現在毒性は認められていません。

周期表の横の列も見てみましょう。
ビスマスの左から4つ目はAu(金)。そしてHg(水銀)、Tl(タリウム)、Pb(鉛)、ビスマス。
ビスマスの右はPo(ポロニウム)、At((アスタチン)、Rn(ラドン)と並びます。

ポロニウムは強力な放射能を持ちます。アスタチンは半減期が極めて短いのであまり知られていませんが人工放射性同位体が癌の治療用途での研究がすすめられているので、その放射能の強さが推測されます。
そして一番右ラドン。これも安定同位体は存在しない、つまりすべて放射性同位体、放射能元素です。こうみていくと、ビスマスはギリギリのところに存在する、あるいはとても奇異な元素であることがわかります。
そして「本当にビスマスは無害なの?」という気がしますね。その本当の答えは「Yes」ではないのです。

周期表でビスマスより右のものはみな、安定同位体を持たない元素です。そのため、このギリギリの位置に存在するビスマスは最後の安定元素とも呼ばれています。しかし、ビスマスもまた、安定同位体を持ってはいないのです。
(つまり最後の安定元素は鉛ということになります)
ただし、さきほどの答えは「No」でもありません。ビスマスは安定同位体を持たないけれど、半減期がとても長いのです。この具体的な数値は2003年に解明され、
1.9×1019年であることがわかりました。

まずは安定同位体と半減期の話をします。きらら舎の以下の説明は小学生でもわかるように咀嚼しているため、厳密にいえばちょっと言葉がたりないよ!などのご指摘もあるかと思いますが、何も知らない人が数分でなんとなくわかる程度を目指しています。

さて、安定同位体とは何か。その前に同位体の説明が必要でしょうか。

同位体って何?

すべての物質の最小構成単位は原子です。原子は、原子核とその周りを回るマイナスの電気をおびた電子で構成され、原子核はプラスの電気をおびた陽子と電気を帯びていない中性子で構成されています。
(原子の構造は図で書いてみるとわかりやすいかもしれません)

電子についてはカフェで蛍光について説明する時にも登場します。今回は、電子は重さが陽子や中性子の1000分の1しかないので、ちょっと避けておきます。

原子の性質は、陽子の数で決まります。この陽子の数が原子番号です。 重さでは陽子と中性子はほぼ等しいのですが数は必ずしも同じではありません。つまり陽子の数は同じなので性質は同じ。でも中性子の数が異なるので、質量が違う、そんなものを同位体というのです。

水素で考えてみましょう。
陽子が1つの水素の質量数は1です。中性子が1つ多くある重水素は質量数2となります。さらに中性子がもう1つ増えた三重水素は 陽子1+中性子2=質量数3 となります。
これが水素の同位体です。

 

安定同位体って何?

最近、放射性物質のことがマスコミで多く取り上げられるようになり、合わせて放射性同位体という言葉も聞く機会があるかと思います。
原子核には、質量数が 2, 8, 20, 28, 50, 82, 126になると、安定になる性質がある事が知られています。先ほど説明した質量1の水素(1H)はこれ以上変化できませんが、三重水素(3H) は不安定で、放射線の一種であるβ線を出して、同じ質量数のヘリウム3(3He )に変わりやすい(崩壊)性質をもっています。β線などの放射線を出す能力を放射能とよび、全体の半分が変わるのに要する時間を半減期と呼びます。放射能をもち、不安定なものが放射性同位体と呼ばれています。
これに対して、安定同位体は、崩壊を起こさず、存在量がほとんど変わりません。放射能もないので安全というわけです。

ビスマスもまた、安定同位体を持たない元素です。しかし、半減期(前述の放射能崩壊を起こして質量が最初の半分になるまでの時間)がとてつもなく長く、約19京年。宇宙が誕生して100~200億年と言われていることと比較すると、納得できるかと思います。

 

ビスマスの名前

Bismuthという名前はドイツで生まれました。ドイツ語でビスマスは「Wismut」。これは「weisse(白い)masse(塊)」はからついたと言われています。Wismutがラテン語訳でBisemutum。そして英名のBismuthとなり、元素記号もBiとなりました。

和名は蒼鉛。宮沢賢治の「永訣の朝」という詩にも登場します。わたしは最初にこの詩に出会った時、まだ蒼鉛なる鉱物を知りませんでしたので、青味がかった光をはらんだ、しかしどんよりと重たい曇天・・・というイメージでした。その後、蒼鉛(ビスマス)は赤みがかった鉛色と知り、「蒼鉛いろのくらい雲」は、その前に登場している「うすあかくいっさう陰惨いんさんな雲」と同じ色合いなんだと気づきました。では、なぜ、和名をつけた人は「赤みをおびた鉛色」に「蒼」の字を用いたのだろうと疑問がわいてきました。

永訣の朝

けふのうちに
とほくへいってしまふわたくしのいもうとよ
みぞれがふっておもてはへんにあかるいのだ
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
うすあかくいっさう陰惨な雲から
みぞれはびちょびちょふってくる
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
青い蓴菜のもやうのついた
これらふたつのかけた陶椀に
おまへがたべるあめゆきをとらうとして
わたくしはまがったてっぽうだまのやうに
このくらいみぞれのなかに飛びだした
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
蒼鉛いろの暗い雲から
みぞれはびちょびちょ沈んでくる
ああとし子
死ぬといふいまごろになって
わたくしをいっしゃうあかるくするために
こんなさっぱりした雪のひとわんを
おまへはわたくしにたのんだのだ
ありがたうわたくしのけなげないもうとよ
わたくしもまっすぐにすすんでいくから
(あめゆじゅとてちてけんじゃ)
はげしいはげしい熱やあえぎのあひだから
おまへはわたくしにたのんだのだ
銀河や太陽、気圏などとよばれたせかいの
そらからおちた雪のさいごのひとわんを……
…ふたきれのみかげせきざいに
みぞれはさびしくたまってゐる
わたくしはそのうへにあぶなくたち
雪と水とのまっしろな二相系をたもち
すきとほるつめたい雫にみちた
このつややかな松のえだから
わたくしのやさしいいもうとの
さいごのたべものをもらっていかう
わたしたちがいっしょにそだってきたあひだ
みなれたちゃわんのこの藍のもやうにも
もうけふおまへはわかれてしまふ
(Ora Orade Shitori egumo)
ほんたうにけふおまへはわかれてしまふ
あああのとざされた病室の
くらいびゃうぶやかやのなかに
やさしくあをじろく燃えてゐる
わたくしのけなげないもうとよ
この雪はどこをえらばうにも
あんまりどこもまっしろなのだ
あんなおそろしいみだれたそらから
このうつくしい雪がきたのだ
(うまれでくるたて
こんどはこたにわりやのごとばかりで
くるしまなあよにうまれてくる)
おまへがたべるこのふたわんのゆきに
わたくしはいまこころからいのる
どうかこれが天上のアイスクリームになって
おまへとみんなとに聖い資糧をもたらすやうに
わたくしのすべてのさいはひをかけてねがふ

賢治は鉱物には詳しかったはずなので、蒼鉛は、その鉱物が持つ色を正しくイメージして用いたのでしょう。
そうすれば「蒼鉛いろの暗い雲」はその前の「うすあかくいっさう陰惨な雲」と同じ(言い換え)と推測されます。
詩の内容から考えても「青みを帯びた鉛色」より「赤みを帯びた鉛色」のほうが禍々しさが伝わってきます。
それでいて、顔色が蒼ざめるという時に使う「蒼」を含む蒼鉛は絶妙な採用だといえるでしょう。

ところで、ドイツ人が白といったビスマスをなぜ和名で青?と長い間不思議に思っていました。
しかし、今回、面白いことがわかりました。
「蒼」という文字の意味をよく調べてみたのです。そうしたら白髪頭の意味もあるらしい。
昔、ビスマスは「若い銀」と考えられていたことがあります。ビスマスが発見された下には銀の鉱脈があることが多かったからのようで、ビスマスを掘りだすと、「まだ埋めとけ!」と言ったとか言わないとか。
つまり、ビスマスは「銀の鉱脈の」「帽子」であり「傘」であり「屋根」であったわけです。
これと白髪頭・・・・・こじつけるには無理があるかな。

 

天然のビスマス

金や銀などは元素鉱物として天然でみつかっていますが、チタン、コバルト、マンガンなどは実際には鉱物としてみつかってはいません。ビスマスも天然ではあまり産出されておらず、ミネラルショーなどでも時々しか出会うことはありません。たまに出会った場合は「自然蒼鉛」というラベルがついていることが多いと思います。これはビスマスの化合物鉱物と区別するためで、ビスマスを含む鉱物は、硫黄と化合した鉱物が輝蒼鉛鉱(輝ビスマス鉱)(Bi2S3)、酸化ビスマス、蒼鉛土(ビスマイト)(Bi2O3)などがあります。

 

(2)ビスマスの用途

薬としてのビスマス
ビスマスは整腸剤として使われています。Pepto Bismolというブランドの胃薬ではその有効成分の57%がビスマスです。とても有名な薬で、日本で言えば正露丸のようなものらしいです。最近ではビスマスがピロリ菌に効くこともわかってきました。日本でもビスマスは医薬品(整腸剤)の原料として、日本薬局方(※2)に収載されています。

※2 日本薬局方とは「医薬品の性状及び品質の適正を図るため、薬事法第41条に基づき、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて厚生労働大臣が定め公示する、医薬品の規格基準書。 構成は通則、生薬総則、製剤総則、一般試験法及び医薬品各条からなり、収載医薬品については日本国内で繁用されている医薬品が中心となっています。

 

スプリンクラーの栓
天井に取り付けられているスプリンクラー。火事になった時に水が勢いよく噴射される、あれです。
融点が271.5 °Cなので、火災による熱で溶けて栓がはずれるという単純明快なしくみです。しかし何より確実ですね。

鉛フリーのはんだ
融点が低いので、鉛フリーはんだに添加されたり、ウッド合金のような低融点合金に使われています。
また、熱電効果(2種類の導体または半導体の両端を接合して閉回路をつくり,両接合点を異なる温度に保つと熱起電力を生じて回路に電流が流れる現象。 1821年に T.J.ゼーベックにより発見されたのでゼーベック効果ともいう)が大きいので、テルルとの合金は熱電変換素子として実用化されています。

そのほかの用途いろいろ
比重が高く(重い)、融点が低い(融けやすい)ので鉛の代替として、散弾や釣り用の錘、鉛・カドミウムの代替として黄銅への添加剤、ガラスの材料などとして用いられています。

 

(3)人工ビスマスの形

人工ビスマスは未来の建造物のようでもありますが、あの特徴的な形(ラーメンどんぶりに描かれているみたいな模様)は骸晶というものです。
ワニ水晶などと同じです。ワニ水晶は水晶の成分となるケイ素と酸素が濃い熱水の中で育ったため、結晶の稜の部分により多くの成分が供給され、そこだけ成長が早く大きく、あの独特な形となりました。
ビスマスの場合は急速に結晶が成長するため、三方晶系の稜(辺)の部分だけが早く成長し、面の部分の成長が追い付かず、その結果、あの形となりました。

 

(4)人工ビスマスの色

天然で産出されるビスマスは「赤みをおびた鉛色」をしています。しかし、人工結晶はとても美しい虹色です。これは酸化膜による光の干渉です。

結晶ができて、不要になった液状のビスマスを流し出すと、結晶は空気に触れます。そして、触れた面が酸化するわけです。ビスマスやシャボン玉の表面に見られる虹色は、薄膜干渉と呼ばれるものです。

 薄膜干渉とは?
薄い膜なのでまず、光は透します。
しかし、膜の表面でも反射されている光があります。
さらに膜の底で反射される光もあります。

​空気中を通ってきた光は薄膜の表面で、まずはね返される光があります。
屈折率が低い空気から屈折率の高い薄膜に突入した光は位相がπずれます。これは光が波と考えた場合に山が谷になるというイメージです。
さらに薄膜の下面で反射する光もあります。
これらが互いに干渉し、つまり打ち消したり増幅したりするのが薄膜干渉です。
いろいろな色に見えるのは膜の厚みが均一ではないためです。
すべての波長が同量散乱すればつまりは「光の色」ですが、波長によって、つまり分光されて散乱されるため虹色に見えます。

 

 

 

Categories: ワークショップ

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