2月26日(火〉

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先週23日(土)の理科室カフェはウニの発生実験だった。

毎年、冬にはミズクラゲとバフンウニのワークショップを行っている。

バフンウニのシーズンは冬なのだが、実際には年によって若干ずれ、今年は少し遅れたようだ。

そういうことも、頻繁に磯へ行かなければわからないことなので、田口教育研究所の田口さんに依頼している。

今年は昨年に続き、海水温が例年より高かったにもかかわらず、1月末にはまだウニは卵・精子をもっていなかったため、今年の実験は2月23日となった。

ウニは満月・新月の翌日の採集がよいらしい。

そこでそれに合わせて採集して送っていただく。結構、金額は嵩むのだけれど自分で採集しにいくよりははるかに楽である。

実験の前日に、一応、予備実験をする。

 

 

オスメスは慣れてくると見分けることができるのだが、個体差もあり、まだまだなかなか難しい。

実験には、まずこの口器を取り外す。アリストテレスのランタンと呼ばれる部分である。

 

生殖器(わたしたちが食べる部分)が濃い黄色~オレンジ色だとメスであるという。

これは、きっとメスだろうと思いながら、シャーレの上でKClを垂らす。

このKClも、毎年のことなのだが、毎回計算をする。

0.5molにするために、K(カリウム)とCl(塩素)の原子量を調べて、そのへんにあるメモ紙と電卓で計算をする。

高校の時に、「モル計算なんて、将来、どこで役に立つというのだ!」なんて思っていたけれど、役にたっている。

 

KClにより筋肉が収縮して卵や精子が放出される。

これが白ければ精子なのでそのまま。黄色ければただちに海水を満たしたフラスコの上に置く。

今年はウニが小さく、用意したフラスコでは口径よりウニのほうが小さいものもあるため使えず、そんな場合には、雑貨フラスコを用いる。

以下は一番大きかったもの。かろうじて200mlの三角フラスコに乗せることができた。

ウニやナマコ、ヒトデは基本五角形なので、穴も5つ。そこから黄色い卵が線を描いて落ちてくる。

 

 

これは23日のワークショップ時のもの。

黒い点は精子である。

まずは180倍と500倍のモバイル顕微鏡で観察する。

うごめく様子は動画撮影のほうがわかりやすい。

 

未授精卵。

光の加減で白っぽい部分があるが、まだ受精前である。

 

それを撮影した後は、参加者は自分のスマホの上で受精をさせる。

 

 

参加者の方の手元を撮影させていただいた。

卵にはすでに精子が入っていて、そこから受精膜があがっている。その周りを精子が取り囲んでいることがわかる。

こうして、参加者には続きは家で観察してもらうのだが、バックアップ用に大きな壜で飼育をする。

結局、理科室カフェは自分が趣味でやってみたいことをしているわけなので、バックアップ用のプルテウスもしょっちゅう観察するし、一応、エサやりや換水が必要なので、このワークショップの後は1か月半ほど忙しいのだ。

ちょうど確定申告の時期なのだけれど、時間があればウニのプルテウスを観察している。

 

ウニのプルテウスは実にかっこいい。

卵割がだんだん進み

 

原腸が貫入してきてこの後、プリズム幼生というものになり、そのあと、三角形のプルテウス幼生になる。

 

2つの腕がまずできて、もう2つは少し遅れて伸びてくる。

上のプルテウスは真ん中奥と左の腕は伸び、真ん中手前と右の腕の突出は少し遅い。

 

プルテウスを飼育するには浮遊珪藻(キートセラス・グラシリス)を与える。

濃縮のものも売ってはいるんだけれど、100mlで5000円以上する上に、2~3週間しかもたないため、飼育期間に3本程度が必要となる。

原液だとさらに高くなるのだけれど、うまく培養すれば夏のムラサキウニにも使えるので、原液培養をしてみることにした。

キートセラスの培養液にはKW21とメタ珪酸ナトリウムが必要で、これらも購入すると数万となり、わけわからない道楽である。

 

iPadにモバイル顕微鏡の500倍を接着してみた。

小さなスライドグラスに垂らした水滴の中で泳ぐプルテウス幼生。

そこにキートセラスを垂らす。

画面いっぱいにキートセラスが広がる。

 

 

 

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