
翌朝、冷凍庫から氷河の氷を取り出してクーラーボックスに入れ、いつもの珈琲と、琥珀色の酒をバッグに押し込んで、もちろん栗を入れたジャーも忘れずに、わくわくしながら家を出ました。
天文台に向かう森の道では、たくさんの木の実やキノコがありました。ヴォーレンダング氏はこれらを少しだけ集めながら道を急ぎました。
日が沈みかけた時刻に、やっと天文台に到着しました。早速、氏は土産を館長に渡し、ドームの上にある凹み・・・いつも二人で酒を呑みながら夜空を眺めて語り合う場所・・・に移動しました。
「採集壜のフタを開けて、掲げておくんだよ。」
館長は、いつもなら真っ先にグラスに酒を注ぐのに、そんなことはすっかり忘れてしまったかのように、空を仰いでいます。
「今晩は、いったいどんな夜空のショーが観られるのかな・・・」
ワクワクしながら、ヴォーレンダング氏も館長の隣で、空を眺めていると、おもむろに館長が西南西の空を指さしました。
「来た!」
大きな火球が、まだうっすらと昼の光が残っている空を切り裂いて消えていきました。
「採集できたか?」
館長がたずねると、氏は大きくうなずいて、大急ぎで採集壜のフタを閉めました。
「火球が落ちたところには、明日、一緒に探しに行ってみよう。まずは、火球の光をマーブル化するのが先だ。」
館長はそういうと、ヴォーレンダング氏が持ってきた氷河の氷をグラスに入れて、琥珀色の酒を注ぎました。遠い昔に氷に閉じ込められた空気が放たれて、チリチリと音をたてました。
火球の光はそれを見る角度によって色が変わり、不思議な光沢を放つマーブルとなりました。
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