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本日、ワレカラ教室に行ってきた。

教室って何?って・・・・・本当に講義だった。

 

 

今回参加したのはワレカラ研究で第一人者の青木優和先生(東北大学大学院農学研究科准教授)を招いて開催されたもので、STWという「Travel + Emotion」を合言葉に、旅のプロデュースをしている会社が企画している「Travel + School」の旅の学校というイベントの一環で、今回は青木先生が最近発行されたワレカラの絵本の版元である仮説社との共同開催。

 

詳細はこちら  >>第63回 藻場で踊るワレカラ教室

 

 

朝から久々の絶不調。

毎年一時期、隣の神社のスダジイの花が咲くと、花粉症のひどい症状が現れる。
おかげで舞い上がらなくて済んだのかもしれない。

 

実は今回、この教室に参加するのを躊躇していた。

その理由は、主催も参加者の多くもダイバーの方だということ。

ダイバーは正しい。海の生物をその場で観察するので。

しかし、わたしのスタンスは家での飼育である。
それも、きちんとした水槽システムを導入していない、小さな容器や水槽。

海にはなかなか行けない。喘息持ちだからダイビングもできない。

その場でなんて観察できない。

・・・・・でも家で飼育ができるとわかることもある、という理論に逃げる。

 

いつもはそんな言い訳をしていても、生物は生まれたところでそのまま暮らすことが幸せで、そういう本来の姿をその場で見ようという正しい姿勢に対しては、やはり気が引けるのだ。

ただ、ワレカラの話は聞きたいなと思っていた矢先、カフェでの生物ワークショップに参加してくださっているお客さまが結果的に行きたい背中を押してくれた。

 

子供のころ、海水浴で捕まえたクラゲ(多分ミズクラゲ)が翌朝、跡形もなく消えていた時から、野生の生物を採集して、自分でそれを長期飼育することにとても興味がある。

これには大人になってから読んだ、アクアリウムの神様と呼ばれるフィリップ・ヘンリー・ゴス(Philip Henry Gosse)の著書と彼について描いている『博物学のロマンス』(リン・L. メリル  Lynn L. Merrill  原著、大橋 洋一・照屋 由佳・原田 祐貨 翻訳)がさらに拍車をかけた。

ゴスは多くの海洋生物の博物画を残している。

個体の描写は精密である。
ただ、その配置は若干おかしい。
これは、人工的に海底の環境を作り、そこに生物を入れたものを観察したからだと思う。
しかし、結果的におかしな配置はアート性を増し、精密な描写をより美しいものとしている。

じっゆりゆっくり観察して正しい絵を描いてみたい、と思った。

 

その後、『水族館の歴史』(ベアント・ブルンナー)を読んで水族館通いをした時期がある。若い時分には、同じくらい動物園にも通ったのだが、年を取ってからは生き物の臭いがしない薄暗い空間に浮かぶ、四角く切り取られた小さな海が好きだった。
ジュール・ヴェルヌの『海底2万里』の影響もあるかもしれない。もっとも『海底2万里』はノーチラス号に設置されていた天気管への興味のほうが大きかったのだが。

『水族館の歴史』には「海が室内にやってきた」というサブタイトルが付いている。ドイツ語の原題は「Wie das Meer nach Haus kam」で、英訳題は「The Ocean at Home」となる。
つまり、海(の生物たち)を室内で見られる、アクアリウムの歴史の本だといえる。

しかし、水族館の展示は実際に飼育していないものも多い。

餌を特定できない(あるいは調達しづらい)ウミウシは消費展示だという。ウミウシを飼ってみた時に「ウミウシアパート」という展示をしていた鹿児島水族館の方に聞いた。
近くの海で採集してきたウミウシを餌を与えずに一定期間展示するのである。ウミウシの多くはカイメンという海生生物を餌とする。しかも、カイメンならば何でもよいというわけではなく、ある特定のカイメンしか食べないのだ。しかし、カイメンの同定は骨格標本にしてみないと難しい。結果的に餌がわからないということになる。

一定期間展示されたウミウシは腹ペコのまま、採集された海に放たれる。
(すぐに餌にありつき、生き延びていることを願う)

 

餌が難しいというとクリオネをあげる人も多いはずだ。クリオネことハダカカメガイはリマキナことミジンウキマイマイを餌としている。しかし、クリオネを捕獲するよりリマキナを捕まえることのほうが難しいのだ。

そんなことも知らないままに、クリオネを買ってしまったことがあった。
調べても餌をどうしたらいいのかわからない。
そこで池袋のサンシャイン水族館にだめもとで質問をしてみた。
サンシャイン水族館でも餌には苦労をしていて、アサリなどを与えてみているという。もしかしたら、小さなプランクトンなども食べるのかもしれないと思いながらも、冷蔵庫に入れた小さなびんの中にアサリを入れることはしなかった。
水質が一気に悪化することは明らかだったからだ。

それでも1年ほど生きた。

もともとクリオネは一生の中で餌(リマキナ)に出会えずに終わることもあるようだ。

 

話を戻そう。

 

ワレカラ教室に行ってきた。

 

一番知りたかったワレカラの種類の判別の仕方が絵本には載っていて、さらに当日参加のおまけもそんなアイテムだった。

「(絵本なので)小学生向けでもあるから、たくさんいるワレカラの一部しか掲載していませんが、この分類の仕方は基本だから、これを知っていればほぼOK!」とおっしゃる一方で、

「でも名前なんてどうでもいいんだよね。海で会って、可愛いなっていうだけで。それがワレカラだとわかるだけでいいんだ。」とも。

「毎朝の電車で隣の車両に乗っている、きれいで髪が長くてメガネをかけた色白の女の子。かわいいなあ、って名前なんかわからなくてもいいんだ。」

・・・・・・でも次の段階としてやっぱり名前は知りたくなるんだと、心の中で呟いてみた。

ただ、まず、海でワレカラに会えば、それだけで嬉しいことは確かである。

 

外食で甲殻類を食べる際にはピンセットをポケットに忍ばせていき、節を数える話。
これは絶対やってみようと誓った。ピンセットはいつも持ち歩いている! よし!!

食べているカニの脚の部位を、正式な節の名称で示す話(一番長くて食べ応えのある節は長節。先っちょの毛の生えてることが多い尖った部分は指節など)など、確かに甲殻類の授業内容でありながら、面白かった。

中でも「交尾前ガード」の話が印象的で、ワレカラは一応エビの仲間(フクロエビ類)なので、交尾はメスが脱皮して体の柔らかい時期にしかできないのだそうだ。我が家の淡水シュリンプたちと同じである。しかし、いいタイミング(脱皮直後)で出会えることが少ないので、一部の種類のオスはメスを持ち歩くのだという。コの字に折り曲げて後ろから3つ目の第5歩脚を腕にように使い、メスを持っているワレカラの写真がㇷ゚ロジェクターに映し出された。

このことを知っている青木先生は、街でがっちり女性を抱きかかえるように歩いているカップルを見ると、

「いつ脱皮するのかな」と思う・・・・・・・と。

そんなアホなw

 

 

次回、生物系ワークショップではワレカラの観察と共に、ここで聞いたいくつかの面白いお話を伝えたいと思います。
そして、やっぱり、自分なりの小さな水族館を極めていきたいと思っています。

我が家のワレカラ水槽では、また小さな赤ちゃんワレカラ(白アリみたいなの)が生まれました。
もともと赤い海藻の森に棲んでいたワレカラは、わたしが追加したウミブドウなどのせいで、薄緑色の個体も増えてきました。
もはや大海を知らないワレカラも多くいます。  >>飼育しているワレカラの話

 

最後になりましたが、ずっと欲しかったけれど入手することができなかったワレカラの絵本。
(最初は自費出版で発行部数が少なかったと、昨日知りました)

挿絵も甘くなく、それでいて柔らかいタッチで美しいので、興味のある方はぜひ手に取ってみてください。

>> 仮説社

 

 

 

 

 

 

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かよこ さとう ()

Website: https://kirara-sha.com/

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