ワレカラ
ワレカラ。
漢字をあてると「割れ殻」となります。
そのほかにも古い書物には当て字のような様々な表記が見られますが、いろいろな当て字が存在するということは、それだけ昔はワレカラが身近な生物だったということでしょう。
「割れ殻」を「破殻」と表記する辞書もあるので、藻についたワレカラが藻と共に採集されて乾燥して、殻が割れてしまう様子からこの名前が付いたと考えられますが、実際には「甲殻類なのに殻が硬くないから」この名が付いたという説もあるようです。
学名「Caprella」は capro(山羊)+ ella(小さい)という意味。
頭の上に突出した触覚が山羊の角ようです。
ワレカラを知ったのは大学時代、和歌に登場したため調べたところから(文学部文学科)。
ワレカラを「我から」とかけた歌が多く、いくつもの歌に登場しています。
実際に藻の上を急ぐ時に、前にいる仲間を押しのけて進む様は「ワレカラ先に・・・・」という態です。
和歌では「自分から身を引く」といったニュアンスで使われているものが多いです。
興味を持ったとしても大学生だったので他に気になることがたくさんあり(世はバブル真っただ中だったし)、湿っぽく恨みがましい和歌もあまり好きではなかったので、ワレカラはわたしの中では「和歌に登場する変なエビの仲間」という認識にとどまっていました。
この時にYouTubeがあって、その動きを見ることができていたら、その時代から飼っていたかもしれません。
20代の頃は、車の運転が一番の趣味だったため、今よりもフットワークも軽く思いつくまま遠出ができていたので、あちこちの海を渡り歩き、ワレカラを探していたと思います・・・・・と、いうほど、今ではお気に入りの生物です。
大人になってからは、なかなか長く家を空けることができなくなったため、海での採集はたくさんの人に助けていただいていました。
その中で、季節で採れる海月を送ってくださっている方から届いたカギノテクラゲの海藻にワレカラがついてきました。
そこでワレカラメインで再度送っていただきました。
通常、甲殻類の体は頭部・胸部・腹部に分けられます。
胸部に胸脚(歩脚)が7対あります。
しかしワレカラでは,腹部が退化し痕跡的な形状をとどめるのみで、第3・4胸脚も退化しています。
その結果、第5・6・7胸脚が足のように藻を掴んで立ち、
第2胸脚が腕のように動き、
背中を丸めたり伸ばしたり、のけぞったりとユラユラ・・・・・
人間的に見えてしまうのです。
上の写真はトゲワレカラ(だと思います。眼の後ろ、頭部分にトゲがあります)。
第一触覚の付け根にある黒い点が眼。
まるでヘドバン♪
我が家の水槽は17cm角です。
水槽というよりアクリルボックス。
(これはこの記事を書いた2018年の春のことで、現在は着実にサイズアップしています)
寿命は3~4か月と言われていて、初代は来た当初すでに成体だったのでみな寿命尽きたようですが、今は次の世代が生きています。
メスは腹に育児嚢を持ち、孵化した後もしばらくは子供が親の体にしがみついています。
動きが激しいのでブレまくっていますが、おなかが膨らんでいるのでメスのようです。
これも育児嚢があります。
生れた子供が体にくっついています。
お母さんの体から離れて(でも近くの)海藻にくっついていました。
小さいですw
でも動きはすでにワレカラ。
ペットショップで売られている生物ではないので、飼育温度など確実なことはわかりませんが、この水温で世代交代までしているので、20℃~25℃をキープ(冬には保温)するのがいいと思います。
前述のとおり小さな水槽に海藻をたくさん入れ、底面フィルターで濾過しています。
(2019年では一回り大きな水槽になって、底面フィルターとスポンジフィルターの二刀流です)
餌は海藻で十分ですが、シラスやブラインシュリンプやサクラエビなどなんでも食べます。
海藻以外のものを与えた場合は食べ残しを掃除します。
水が汚れるのにあえて海藻以外のものを与えているのは・・・・・やってみればわかります。
水槽に食べ物を入れたとたん、今までどこにいるのかわからなかったワレカラたちが一斉にヘドバンを始めるのです。
手渡しするのも面白いです。
夜、日本酒片手に、肴のサクラエビ(今回はAEONで小分け2パックで売られている半生のやつ)の身の部分を少しちぎってピンセットで手渡します。近づきすぎるとビビッてのけぞる(かなり大げさに)ので、少し離れたところで待機していると慌てて数匹のワレカラがやってきて取り合いをします。
ブラインシュリンプをいれるとはりきって捕まえようとしますが、やや腰がひけてるような。
捕まえられそうになった時の慌てっぷりに注目です。
ワレカラ母さんがいっぱいいます。