カフェでビスマス鍋というワークショップをやっています。
ここ数か月は毎回大きな結晶が採れていました。
多分、約10kgのビスマスから300g超える結晶が取れるのは、かなり成績はよいと思います。
しかし。今週は大きく育たなかったので、ビスマス人工結晶についてまとめつつ、(そんなことしている場合じゃないのに)検証を始めました。
ちなみに実験じゃなくって検証です。生粋の文系なので、あえて説明しておきます。ただ実験してみるのではなく、大きな結晶を作るための条件やより多くの色を出すための方法を模索し(これは実験)、そうなるにはこうするとできるということを証明できるように頑張ります(検証)。
大きな結晶をつくるための条件がわかった気がするので、ここまで書いていたものは削除しました。
検証ができ、今後の課題などと書き足した部分は青文字にしています。
8月13日午前中のリモートで取れた結晶
一度目(385.7g)
大きな結晶が取れてしまったため、これだけで終了
二度目
いくつも、そこそこいい感じの結晶が取れた。参加者の方へ発送した残りなので一度でこのランクがこれ以上取れたということ。
8月14日の検証
ビスマスの結晶はふつうの結晶ではなく、骸晶です。一般的な結晶はゆっくり育つほど美しい結晶になりますが、骸晶をつくる場合には早く冷めることが必要です。
しかし、早すぎると大きな結晶が育たないという説もあります。
どうすればいいのか。理屈はわかったのですが、それを実現させる方法をこれからもっと極めていきたいと思います。
もう一つ。表面の酸化ビスマスを足場にして表面から下に結晶が育っている印象がありました。
しかし、失敗時には、表面いっぱいに酸化ビスマスが広がり、結局、それが厚くなってしまって、結晶は育たないという状況になっています。
そこで、灰汁取りをしました。つまり酸化ビスマスを除去して実験しましたが、結果に違いはありませんでした。
酸化ビスマスは除去して、いろいろな場所から結晶が育つのを防ごうという説があります。いろいろな場所から結晶が育つと、取りたい場所から育つ結晶が小さくなるという意味だと思いますが、これが違うという結論に達しました。
酸化ビスマスが表面を覆った状態で固めた結果、酸化ビスマス部分が厚くなって結晶が育ちませんでした。これは前日の失敗と同じ状況です。底や縁に育ってしまっているのかと、探ってみましたが、どこにも大きな結晶がありませんでした。
一応、再加熱して底にできていた結晶を剥がしましたが、小さな結晶がしょぼっとついているだけでした。
つまり、表面から育たない条件の時には鍋の底でも大きな結晶は育たないということです。
とりあえず、ある程度酸化ビスマスを除去(灰汁取りと呼んでいます)したうえで、少量残った酸化ビスマスを真ん中に寄せて大きな結晶が取れました。
取れたあと、底を探ってみましたが、奥にも大き目な結晶が育っていました。
この時の成功は今回みつけた、「大きな結晶が育つ条件」を結果的に実行することになったことによります。
378.4g
大きな結晶が育つ時にはいろいろな部分でも、そこそこ育つ。表面から大きな結晶が育たなかった時には、底でも大きな結晶はできていない。
カフェにご参加いただいた方に、大きな結晶を引き上げていただけるよう、まだまだ検証を続けます。
逆に大きすぎても困るかもしれません。取れるサイズの制御も必要ですね。
続き・・・・・
真ん中のテーブル
一度で取れた分です。再加熱すれば、さらにまだありそうでした。
これはいつものとおりに引き上げたもの。やはり酸化ビスマスを足場にしています。酸化ビスマスは持ってみると重い(※)ので、そこの表面で固まったビスマスは冷めにくいのだと思います。そのため(酸化ビスマス部分には)美しい金色が出ることが多いです。
※実質的にはビスマスより酸化ビスマスのほうが軽いのです(だから表面に浮く)。しかし、骸晶にならず、密になっているため、見た目の量は少なくても重く感じるようです。
繰り返しますが、分子レベルでは酸化ビスマスよりビスマスのほうが重いです。
これは再加熱で底にあったものをはぎ取ったもの。足場は薄いですがちゃんと結晶ができていますね。
入口近くのテーブル
スプーンと比較すると大きさがわかるかと思います。真ん中のテーブルよりは少し小さめですが・・・
266gありました。
もう一つの検証・・・・・
色が変わっています。これはまだまだ検証が必要ですが、なんだか行けそうな気がします。陽極酸化ができない場合の手段です。
虹色になった!
気になると他のことがおろそかになるため、気がすむまでやってみよう!・・・ということで、酸化膜を除去した結晶の再被膜形成をしました。
まずは酸化膜を除去。
被膜形成。
大成功!
次は電流電圧、時間と色(被膜の厚さ)の関係を検証します。
蛇足ですが。面白い現象を発見しました。
一度固まった後、少しだけ再加熱すると、表面に小さな星のような結晶が出現し、四角く育っていきました。
きらら舎の他の実験で、たとえば結晶生成管を作る時に塩化アンモニウムを溶かすと試験管が冷たくなります。
結晶生成管は結晶ができる時に、結晶が溶ける時に吸収した熱を放出するので、試験管内に対流ができます。試薬によってはその逆もあります(溶ける時に放熱する塩化カルシウムなどは融雪剤に使われます)。
ビスマス結晶は、過冷却から育つため骸晶となるという説があります。そして、鋳鉄などでも共晶温度と共に注意すべき点として、金属が液体から固体になるときに、凝固潜熱により熱の放出がありますが、固まり始めた(でき始めた結晶が)ビスマスがこの熱で再び溶けるのではないかと考えられます。そして再び固まるということを繰り返た結果の骸晶というわけです。
そして、この四角いもの。これはゆっくり冷めた時にできる、普通の結晶です。
はじめに星のように現れて、四角く育ちます。引き上げるときれいな四角い結晶がタイルのように並んでいます。ビスマススプーンの時にはこれを作ってみることにしましょう。
ビスマス鍋ワークショップ・ビスマス鍋リモートに参加される方へ
ビスマスの虹色は表面が空気に触れて薄い酸化膜ができることによる光の干渉(薄膜干渉)です。シャボン玉や水たまりに垂れた油膜が虹色に見えるのと同じ原理です。
そして、その色は膜の厚さによるので、部分的に色が違って見えます。
大きな結晶は縁は赤紫色をしていて、結晶の中心部分(奥のほう)は美しい青色です。これは早く冷めた部分の酸化膜が薄く、ゆっくり冷めた部分の酸化膜は厚いということです。
この酸化膜と色の関係は、ワークショップやリモートの時に実際に目で見ていただいています。ネットなどでは色名で説明されていますが、実際に見るのとは違うので、ぜひ、自分の見た色の順番を記録していただきたいと思います。
次回は結晶づくり&酸化膜を除去して酸化膜再生によりさらに美しい色を出すまでやります。
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