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イリノイ州からケンタッキー州にまたがるアメリカ最大の蛍石鉱脈に沿って、その昔数百もの蛍石鉱山がありました。もともと、製鉄のフラックス(融剤)として使われるために採掘されていました。

標本として掘られるよりはるかに量も利益も大きく、多くの鉱山は鉱石を採掘するためのものです。

そして、鉱山というと、何かが採れる山があると思っている人も多いのですが、採掘するために縦坑(シャフト)を掘ったりそこから横穴を伸ばしたり、運搬用のトロッコを設置したりしたものです。鉱山の名前はそれを運営する会社の名前や会社が付けたものです。

 

鉱脈が地上に出ている場所を露頭といいます。

そこから掘れたら楽ちんなのですけど、なかなかそうもいかず、露頭によって鉱脈が見つかったとしても、結局は地下深くから採掘する・・・・・・という鉱山が多いです。

余談ですが鉱山の入り口の枠(穴の入り口の崩れ止め的に作られている枠)には日本では栗の木が多く使われています。

 

イリノイ州の蛍石鉱山は浸水・冠水や、時代の流れによってどんどん閉山してしまい、結局、1995年にすべての鉱山が閉山し、時代を終えました。

 

工業用の採掘とはいっても、それを美しいと思う人間の気持ちはみな同じで、イリノイ州の鉱山全盛期にはこの地域のお土産として劈開を利用して八面体に割られたものがたくさん作られました。職人たちは巧に鏨を使って大きな塊から八面体を生みだしたそうです。

製鉄用の蛍石が莫大な量ですので、ちょいと形のいい標本を抜き取っても、きれいな欠片を劈開用にしても全く問題ないんだという話を聞いたことがあります。

羨ましがっていたわたしに、その話をしてくれた鉱物業者のおじさんは

「鉱山に行くといいよ。こんな欠片(小さな八面体を作れそうな欠片)なんてたくさん落ちてるよ。」(多分そんな英語)と言っていました。

わたしは「漁港の猫みたいだ(If I go to the mine and pick up the fluorites, I ‘m like a cat at a fishing port)」と返事をしました。

その会話の数年後にイリノイ州の鉱山は終わりました。

 

『鉱物レシピ』の表紙に使った大きな八面体はこの時代のものです。
(上が切れてしまっていますが、上の大きな蛍石)

 

 

 

鉱山がすべて閉山しても、標本用、八面体劈開片は大量にありましたので、少しづつ価格が上がりながらもいつも手頃な価格で入手することができました。

 

 

 

 

 

しかし閉山から10年も経つと、だんだんと色の薄いものしか売られないようになり、業者の在庫も底をつき始めました。その頃、鉱山入口のまだ人が入れる場所から地学研究のサンプルなどで蛍石は採られていましたが、それらがまた標本として流通し始めました。また、塊は八面体に劈開されました。

 

 

昨年くらいから、とうとう市場在庫がなくなってきました。

時々扱っている業者さんがあっても、以前の10倍近い価格となっています。

 

ビンガム産蛍石の価格を考えれば、同じくらいなので仕入れてもいいのですが、ビンガム産蛍石の八面体よりもはるかに状態がよくないものが多いので、イリノイ州産八面体蛍石の輸入は休止することにしました。

 

時々、コレクター放出品が出るので、それを期待することにして(※)、これからは在庫の塊をひたすら劈開割りしてみることにします。

 

美しいベリーピンクの塊は、完全に八面体にするとかなり小さくなってしまうため、角が一つ欠けた形で完成としました。

 

なお、劈開割りワークショップは時々入手できる(最近はほとんどないのですが)イリノイ州のチップと中国産の美しい青色蛍石にて続けていく予定です。

 

 

※2019年5月1日にアメリカの業者さんがコレクター放出品を入手・販売したので注文しました。

詳細は「オールドコレクション」で検索してください。

Categories: 第壱標本室

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