先日、緑色の柘榴石のお話を書きました。
緑色のほうはアンドラダイトが到着したら「その2」をまとめます。
先に赤色のほう。
柘榴石/Garnet というのは鉱物種の名前ではなくグループ名です。
化学組成の一般式 A3B2(SiO4)3 で表される等軸晶系のネソ珪酸塩鉱物群のグループ名で、通称は柘榴石グループ。
等軸晶系とかネソ珪酸塩鉱物などのお話はまたいつか・・・・・
さて、この式のAにはCa、Fe2+、Mg、 Mn2+が入り、BにはAl、Cr3+、 Fe3+、 Mn3+、 Si、 Ti、 V3+、Zrが入ります。またSiは一部As, V, Al, Fe3+、Teに置換されます。
文字の説明だけではややこしいので、実際の柘榴石で考えてみます。
現在、柘榴石グループに属する鉱物は15種類が知られていますが、代表的なものは、以下の6種類です。
鉄礬柘榴石(Almandine)・・・Fe2+3Al2(SiO4)3
苦礬柘榴石(Pyrope)・・・Mg3Al2(SiO4)3
満礬柘榴石(Spessartine)・・・Mn2+3Al2(SiO4)3
灰クロム柘榴石(Uvarovite)・・・Ca3Cr2(SiO4)3
灰礬柘榴石(Grossular)・・・Ca3Al2(SiO4)3
灰鉄柘榴石(Andradite)・・・Ca3Fe3+2(SiO4)3
漢字の「灰」はカルシウム、「礬」はアルミニウム、「苦」はマグネシウム、「満」はマンガンを表します。
この6種は大きく2つのグループに分けることができます。
鉄礬柘榴石(Almandine)・苦礬柘榴石(Pyrope)・満礬柘榴石(Spessartine)
と
灰クロム柘榴石(Uvarovite)・灰礬柘榴石(Grossular)・灰鉄柘榴石(Andradite)
苦礬柘榴石、鉄礬柘榴石、満礬柘榴石の3種の間では連続固溶体が形成されます。
さきほどの3つの種の化学組成式をみても、また、名前からもわかるように基本の組成式は同じで、それぞれマグネシウム、鉄、マンガンの部分が異なっています。
連続固溶体というのは、マグネシウムと鉄の両方を持っていたり、鉄とマンガンの両方を持っていたりするものもあり(・・・・・というより、ほとんどが1つしかもっていないことはないというほうが正しいのですが)、結晶構造を保ちつつ、各成分はいろいろな比率で混ざり合っています。それでこのグループ(固溶体グループ)をPYRope、ALmandine、SPessartineの頭文字をとってパイラルスパイト(pyralspite)系列と呼びます。
また、他の3種類、灰クロム柘榴石、灰礬柘榴石、灰鉄柘榴石の間にも連続固溶体が形成されます。こちらのグループについてはアンドラダイトが届いた時に、「緑色の柘榴石 -その2-」として説明します。
現在、きらら舎では鉄礬柘榴石は茨城県山の尾で採られたミニチュア試験管入りの小さな結晶を販売しています(カフェのほうには、1cm~大のアラスカ産のものもあります)。
鉄礬柘榴石は透明度は比較的低く、色も黒っぽい赤色をしています。
それに対して苦礬柘榴石は、チェコのものが有名ですが、透明度が高くてまさに柘榴の実を彷彿させるような美しさのものが多いのが特徴です。
満礬柘榴石も流通量はあまり多くはありませんが、標本は美しいものが多く、色は赤色~オレンジ色をしています。
緑色の柘榴石のページでも書きましたが、それぞれの種の名前は極端な例を想定してつけられたものです。実際にマグネシウムしか入っていないものはほとんどなく、マグネシウムと鉄の両方の成分を持っているけれど、マグネシウムのほうが多いので苦礬柘榴石としよう・・・という感じで決められています。
極端な例の成分を「端成分」といいます。
今回、ミニチュア試験管を作るためにマダガスカル産の柘榴石を仕入れました。業者さんと鉱物名について話をしました。
それで、苦礬柘榴石と鉄礬柘榴石の中間であると答えが出ました。
中間のものは、ロードライトガーネットと呼ばれます。これも宝石通称名(コマーシャルネーム)です。
パープルガーネットという呼び方もあるように、パイロープほどの赤い透明感はなく、かといって、鉄礬柘榴石よりもきれい・・・・・中間にあって紫を帯びたものが多くあることから、ロードライトガーネットと呼ばれています。ギリシャ語でバラの意味を持つ「ロドン」を語源としています。
『鉱物きらら手帖』にも書きましたが、英名の最後の「・・・lit(lite、it、ite)」は石という意味です。
モバイル顕微鏡で撮影してみました。
こうやってみると、真っ赤なものから、紫色や紅色のものまで色に差があることがわかりますね。
それから、マラヤガーネットも入荷しました。こちらはルース製作業者の方からの仕入れ。
マラヤガーネットは1979年頃に発見されたばかりの新しいガーネットです。
マラヤガーネット(Malaya Garnet)という名前も宝石通称名(コマーシャルネーム)。
苦礬柘榴石(Pyrope)と満礬柘榴石(Spessartine)の中間種です。
タンザニアのウンバ(Unba)とマヘンジ(Mahenge)などで採れることから、ウンバライト(Umbalite)とかマヘンジガーネット(Mahenge Garnet)などとも呼ばれています。
色が多様で、赤系から褐色、黄色系、カラーチェンジするものもあります(ビンガム蛍石やアレキサンドライトほどではありませんが)。
これも今回、ミニチュア試験管に詰めました。
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