イリノイ州産の蛍石。
かつては無数にあった鉱山も次々に閉山し、1995年の秋、残っていた最後の鉱山がその稼働を止め、19世紀から続いていたイリノイ州の蛍石鉱山の歴史はその幕を下ろしました。
わたしが一番最初に買った(買ってもらった)鉱物標本がこのイリノイ州産の蛍石を劈開を利用して八面体に割ったものでした。当時はたくさんあった蛍石の欠片や塊を職人さんたちが器用に鏨を使って割って、この産地のお土産にしていました。
イリノイ州の蛍石というと、多くの人がキャビネットサイズの蛍石標本よりも、この八面体を真っ先に思い浮かべるでしょう。
いろいろなところに書いていますが、それほどたくさん流通していた八面体蛍石。その後もしばらくは業者の在庫も豊富にありました。しかし、だんだんとその数は減り、それに伴い価格は上がっていきました。さらに、鉱山稼働時にはキャンディーのように色とりどりだったものが、だんだんと色の薄いものばかりになっていきました。
そうなると、塊を持っている業者はそれを八面体に割って売り始めました。同時に鉱山入口付近ではまだ採集ができたので、そこから蛍石を採掘する業者も現れました。
イリノイ州の蛍石鉱脈の記録として、地質学的な意味でも採掘がなされ、その一部が売りに出されました。
そして、今から4年くらい前でしょうか。
イリノイ州産の蛍石はほとんど市場からその姿を消してしまいました。
その後は、いわゆるコールドコレクションと呼ばれるものが、時々売りに出されるようになりました。
オールドコレクション。
つまりは鉱山が稼働しているくらい前のコレクションで、コレクターの放出品です。
さて。
前置きが長くなりましたが、今回紹介するものは、オールドコレクションでもイリノイ州の有名なディーラーだった人のコレクションです。
イリノイ州の蛍石は、イギリスや南アフリカのもののように蛍光が顕著ではありません。しかし、多くの蛍石が青色蛍光を呈する中、赤く蛍光するものや、インクルージョンが素晴らしく光るものなどがあります。
これはインクルージョンが銀河のように光ります。
もともとは青と紫の中間くらいの色です。
クラックが多く、そこに虹が浮かんでいます。
虹は強く、ブラックライトをあてても消えず、宇宙、または降るような星空に虹が浮かんでいます。
クラックで、宇宙の風景は区切られ、とても幻想的です。
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