子どもの頃(もちろん今も)、近所にはたんぼというものもなかったし、大きな池もなかった。
弟は自転車で40分ほどかかる公園に時々ヘラブナを釣りに行っていたが、釣りには興味がなかったので、一緒に行くことはなかった。
ある時、餌としてのミジンコ飼育を始めた。近所で採集するという発想はまったくなかったので、売られているものを買ってきた。
飼ってみるとこれが面白い。減らない餌というのもいい。
どんどん殖やすためにはどうしたらいいのか調べることにした。
知ってみると生態も興味深いものだった。
よい環境下ではミジンコにオスはいない。メスはメスが産まれる卵を単独で作り、産んで殖えていく。ところが環境が悪化するとオスが生まれる卵を産んで交尾をする。有性生殖で生まれた卵(耐久卵)は通常の卵と形も色も違っていた。
通常は体の真ん中あたりにある卵巣で作られたまん丸い卵が背側の育房に生み出される、やがて卵割(発生)が進み、ミジンコの幼生となって、産み出される。卵は黄色味を帯びた白っぽくてまん丸いものだ。
しかし、有性生殖で生まれた卵は鞘にはいった黒いものである。
ミジンコの体が透明なのは、水中で捕食者にみつからないようにという理由がある。しかし、卵が黒いのはとても目立つ。なぜ卵は黒いのだろうか・・・・・
答えは1つだろう。
捕食者にみつかるため。
マミズクラゲのフラスチュール(ポリプの前段階の幼生)は糸のようなものを付けている。これで池にやってきた鳥の足などにくっついて別の池へ移動ができる。黒い卵もまた、捕食者に食べられることによってミジンコ自身で行ける範囲よりはるかに遠い場所に運ばれるだろう。
たとえばメダカがミジンコを食べる。そのメダカを鳥が食べる・・・・・消化されず糞と一緒に耐久卵は排泄されて、遠い場所で命をつなぐのだ。
生物には、自らがより長く生き延びることではなく、いかに子孫を増やすかが重要だということだ。
上の写真はすべて小さな容器で飼育しているオオミジンコである。
耐久卵を持った個体は、オーストラリア産ということだ。オーストラリア産は他のオオミジンコと容器を分けている。
他のオオミジンコの体は黄色がかった半透明だが、オーストラリア産は赤い。容器も個体数も他の容器と変わらないので酸欠ではなく、これが本来の体の色だと思っていたのだが、耐久卵を抱えた個体が出現しているというのは、環境が悪いのだろうか。酸欠なのか・・・・・
耐久卵を抱えている個体だけではなく接合している個体もいる。
捕まえてシャーレに入れてみた。
シオミズツボワムシのオスも耐久卵を残すために生まれる。オスは消化管を持たない。餌も食べない。
つまりシオミズツボワムシのオスは交尾して耐久卵を残すためだけに生まれてくるのだが、ミジンコのオスは、ちゃんとクロレラを食べているようで少し安心する。
現在、
- ミジンコ(Daphnia pulex)
- オオミジンコ(Daphnia magna)
- タマミジンコ(Moina macrocarpa (Straus))
- スカシタマミジンコ(Moina micrura Kura)
- ケンミジンコの仲間(Cyclops)
がいる。
ミジンコはクロレラや酵母などで培養ができるが、ケンミジンコは肉食なので、ゾウリムシやワムシを与える。
ゾウリムシやワムシがいない場合は、メダカの水などに微生物が必ずいるので、それを足しておくとよい。
クラゲ採集にはそれほど頻繁にはいけないので、とりあえず、近くの池でプランクトン採集をしてみることにした。ゾウミジンコやタマミジンコはすでに季節は終わっているので、採集の望みは少ないが、植物プランクトンやケンミジンコには出会える。
2019年11月08日
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