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- プロペラ容器の話
- プルテウスの稚ウニへの変態について
きらら舎一号館ノートには、なんどか書いていますが、ウニにはシーズンがあります。
バフンウニは冬、ムラサキウニは夏、アカウニは秋、など。
地域によって多少の違いがあるのでとりあえず四季で書いてみましたが、関東近辺ではバフンウニは1月下旬から4月中旬です。
受精実験でウニが使われますが、バフンウニが比較的簡単で受精膜があがるのもよく見えるし、雄雌の区別もしやすいので一番使われるのではないかと思います。次にムラサキウニが多く使われています。
しかし、研究者の方の話ではコシダカウニがとにかくきれいだと。
実際に卵の透明感も素晴らしく、卵割が進んでいる時はガラス細工のようです。
しかし、授業でコシダカウニがほとんど採用されていないのは、採れないということもあるかもしれませんが、シーズンが短いのです。
一般に7~8月と言われています。
しかし、きらら舎実験室のウニ水槽では年がら年中、放精・放卵が起きています。
今回は2月21日。
たしかに、前日から比べると一気に気温は上がっていました。しかし室内での飼育なので、それほど外気温に左右はされないと思います。
基本的に物理的な理由からきらら舎実験室にあるすべての水槽は小さく、ウニも例外ではありません。
とても小さい水槽の中にライブロックを入れて、最初は小さかったウニたちを入れていました。しかし、特にムラサキウニがどんどん成長し、大きな個体では棘の先から先まで7cmを超えるようになりました。
そこで、少しだけ大きな水槽に換えることにしたのです。
10:00 水槽に海水を入れて、ライブロックを配置開始
10:05 順番に生体を移動
10:12 放精発見 隔離
10:17 もう1匹放精開始 隔離
10:25 放卵開始
10:30 もう1匹放卵開始 横の1匹放精開始 (隔離)
卵はスポイトで回収、精子追加などは一切行いませんでした。
スポイトで回収したためか、損傷した卵が多いようです。
もしかすると成熟不全、まるっきりのシーズンオフ、水槽飼育などの原因による奇形かもしれません。
その後、調べた結果、やはりコシダカウニの卵はバフンウニなどに比べて脆いみたいです。
当たり前といえば当たり前ですが、変形した卵には精子は来ていませんが、正常な卵には精子が群がって
精子が突入したところから受精膜があがってきました。
その後卵割も進んでいます。
コシダカウニは透明できれいなのですが、卵割が進むときれいな形で
気がします(受精膜はその周りにあるので、奇形などではないと思います)。
現在受精から24時間。桑実胚直前といったものから胞胚期のもの
その後、こんなのが多くみられるようになりました。
後日、この写真を研究者の方に見てもらったところ、ポリスパーミーだと・・・・・リモート打合せの直前の電話での話だったので、書き留めてはおいたのですが調べてもカタカナ表記ではわかりませんでした。
それでモバイル顕微鏡の白根さんに聞いたところ、「polyspermy」だと教えてもらいました。「一つの卵に複数の精子が受精することです」とのことです。
こうなってしまう原因で、思いあたるのは「精子の濃さ」。前述の10:30の放卵時に、すぐ横にいた個体も何かを出し始めたのです。時間差的に卵だと思って、とりあえずは先に吹いたほうの卵を回収していましたが、どうも横のやつのは卵じゃないっぽい!と確認して(放出しているものを吸い取ってシャーレに出してみる)そして、隔離しました。
この間、近いところで放出された精子を卵と一緒に採取してしまったのが多分原因です。
ウニの卵(のDNAとRNA)に発生を阻害する物質を入れても、孵化直前までは卵割が進むのだそうです。
問題は孵化。
今回は孵化できたものがあれば、それは今後も大丈夫だよ!ということでした。
まあ、大丈夫じゃないんですけどね・・・・・コシダカウニはきれいな分、卵も弱い。多分プルテウスも弱いんです。生体の棘はいがぐり頭みたいに短いのですが、プルテウス時の腕は細くて長く、すぐに絡んでしまう。
密度を低く飼育しなくてはいけないのです。
プロペラ容器の話
バフンウニ、ムラサキウニは大きな容器の中にゆっくり回るプロペラを入れて撹拌しながら飼育します。ウニが沈んだっきりにならないようにするためです。
しかし腕が絡まりやすいコシダカウニの場合、密度がごくごく低くないと、プロペラ容器飼育は適さないようです。
培養フラスコで止水飼育していたもののほうがちゃんと生きていました。
そして、止水でも沈んだっきりになりませんでした。
「プルテウスは水面に集まるので、できるだけ水面が広い容器がよい」と言われています。そのため、シャーレで飼育する場合もあるようですが、培養フラスコを立てておいても、結構、水中を漂っています。
プルテウスの稚ウニへの変態について
8腕プルテウスになった頃から、体の中ではウニになる準備が着々と進んでいます。将来ウニの体になる部分を「ウニ原基」といいます。ウニ原基はウニの体の真ん中(正中線)と垂直に交わる方向に成長していきます。
やがてアポトーシスによって腕が短くなってきます。
原基の成長に伴い、胃腔が小さくなってきます。
原基の中に管足ができます。最初は5本。
これが体の外に出てきます。
そろそろ泳ぐのをやめて下に降りてきます。
このあたりで変態キットにセットします。
これはまだ早かったようです。
タブレットの上のモバイル顕微鏡の上に載せているのが変態キット。
クリームケースの中に石灰藻が付いたライブロックの破片を入れています。
このまま飼育してこのまま観察・撮影ができます。
まだ腕は残っていますが、管足(先に吸盤がある)に続いて、棘(ない)
がたくさん出てきました。
もう泳ぐことはできません。
無事に稚ウニに変態しました。
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