【ドフラインクラゲ】
ヒドロ虫綱
ハナクラゲ目(無鞘類)
ウミヒドラ亜目
クダクラゲ科
ドフラインクラゲ属
学名:Nemopsis dofleini
英名:Hydrozoan Jellyfish
日本近海で春先に現れるクラゲです。
釣鐘形の傘の縁に束になった細い触手がついていて、ぷっくりしたゼラチン質の傘と白い十字の生殖腺が特徴です。
ドフラインなんてドイツ人の名前が付いていますが、日本固有種です。
名前の由来は明治末期にドイツの動物学者フランツ・ドフライン博士が東京湾で発見した(その後の1909年、O・マースにより記載された)ことによると言われています。
ドフライン博士(Franz Theodor Doflein , 1873-1924)
ドイツの動物学者。1904年~1905年にかけて中国・日本・スリランカを訪問し「日本紀行」を著す。1904(明治37)年9月4日から約2ヶ月間、三崎の臨海実験所に滞在し、相模湾の深海生物等の調査研究を実施し、莫大な数の魚類や無脊椎動物の標本を採集し、ドイツに持ち帰った。
ドフラインクラゲの見た目はカミクラゲに似ています。
カミクラゲは、その生活史がいまだ謎に包まれているので、ドフラインの小さめサイズをみつけたら、カミクラゲの稚クラゲ発見!!と思って一瞬喜んでしまいそうです。
ヒドロ虫綱はクラゲの中でも最も種類が多く、その中でもわりとポピュラーなものは、エダアシクラゲやエイレネクラゲ、ベニクラゲでしょう。これらは走る根(ストロン)と呼ばれる地下茎みたいなヒドロ根を伸ばし、張り巡らせ、そこからヒドロ花と呼ばれるポリプが生えてきます。ポリプからクラゲ芽と呼ばれるものが出て、それが遊離してクラゲになります。
しかし、ドフラインクラゲは円盤状の厚さ0.05~0.1mm、直径0.2~0.5mmのヒドロ根から単立でポリプが出ます。ポリプのサイズも体長0.4~0.6mmという極小のため屋外ではまだ見つかっていません(資料/『歌山県田辺湾産クラゲ類のポリプたち』著:久保田 信)。
ただ、1964年に北海道厚岸産のクラゲから長尾 善 先生が実験室で生活史をまわし、クラゲからポリプ、クラゲ芽というサイクルが解明されています。
糸状のストロンであれば、わかりやすく、飼育容器の壁面などについたものをはぎ取って、別の容器で飼育することも可能ですが、単立ポリプでさらに小さいとなると、飼育容器の中で見つけることも結構難しいかもしれません。
ならば、できるだけ容器を洗わずに済むように濾過システムを使うか、それとも安定した水流を優先するか(同時にできる水槽を置く場所がすでにないので)悩むところです。
3月15日(月)
大き目な水槽であれば、止水でも飼育できるということなので、濾過優先ということでスポンジフィルターで様子を見ようかと思っていたのですが、輸送で結構弱っているみたいなので、まずはくるくる水流のある水槽(濾過なし)に入れました。
飼育適温は20℃までなので、水槽をさらに別のプールに沈めて保冷剤を投入しました。
成熟個体で十字の生殖腺がきれいに出ています。
3月16日(火)
ひらめいちゃいました!!
成熟していそうな個体を例のクリームケースに入れて、モバイル顕微鏡(エッグ)で観察することにしました。
いました!
抱卵しているようです。ドフラインクラゲもまた、ミズクラゲなどと同様、受精卵を保育嚢でプラヌラまで育てているようです。
これはまだ体の中です。
肉厚な傘ですが、とても透明なので、中がよく見えます。
プラヌラ、泳いでいますね。
スポイト水流を傘の中に吹きかけてから、お母さんには、ここでお帰りいただきました。
スプーンですくって、飼育水槽に戻しました。
クリームケースの残りの水にプラヌラが泳いでいます。
このまま観察してみます。
プラヌラ観察時、束になって傘の縁の4か所から出ている触手の付け根も撮影することができました。
なんと! 眼点が多分触手の数だけ??あります。
さて。せっかくドフラインクラゲのプラヌラを見ることができたので、次はポリプを見てみたい!
しかし、これが意外と難しそうです。
以下、いろいろ調べた資料です。なんとかポリプにしたいものです。
- ドフラインクラゲの受精卵は約 10時間で遊泳可能な球形プラヌラとなる
- このプラヌラは10数時間で砲弾形に、3日後にはハート形に変形し、後に球形状に戻り、やがて固着する
- プラヌラの挙動:初期の球形プラヌラは右回り自転運動、砲弾形プラヌラ:右回りななめ方向の前進運動が加わる、ハート形プラヌラ:運動の速さは低下する
- 固着し、将来のポリプ体幹部が盛り上がる
- 雌の成体が分泌すると思われる白濁物質が初期プラヌラに対して、より高い 固着率をもたらす作用があるとされているが、まだ多くの問題がある
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