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【ヤコウチュウ(夜光虫)】

学名:Noctiluca scintillans

大きさは1~2mmと図鑑には書かれているが、もっと小さいものもある。

微生物ではあるが、培養容器の外からルーペを使えば、その形は観察でき、肉眼でも丸い粒がわかる。

顕微鏡でみると風船のような形をしていて一部分がくぼんでいる。くぼんだ部分の近くには細胞質が集中している。

細胞質から、放射状に原形質の糸が伸び、網目状に広がっている。

また、くぼんだ部分からは1本の触手が伸びている。

 


 

ヤコウチュウの発光も、ウミホタルやピロキスティスと同様、ルシフェリン(基質)とルシフェラーゼ(酵素)によります。酸素の存在下でルシフェラーゼの触媒によりルシフェリンが酸化されて酸化型ルシフェリンが生じるときに青色光(極大波長= 474 nm)が放出されます。

 

ピロキスティスは概日性リズム(概日リズム)を持っていて、昼間明るい所に置き、夜はきちんと暗くすると、暗くなってしばらくして(つまりは日没後、夜がおとずれた時ってわけ)、刺激を与えると青い光を放出します。

 

ピロキスティス/きらら舎

 

明るいうちに暗い部屋にもっていって、振ったところで光らないのです。

 

 

では、ヤコウチュウはどうでしょう。

ヤコウチュウは採集日(6/9)翌日に飼育環境をいくつか違えてセットした際には若干光った気もしたのですが、夜のほうが確実に刺激によって発光したので、概日性リズムを持っていると推測されます。
(追記:詳細は後述していますが、ヤコウチュウは昼でも刺激で光りました!ただし、昼・夜いずれも暗い場所で確認しているので人間側の問題ではなく、確実に夜の光のほうが多い気がします。継続実験は以下、後日の記録考察をご覧ください。)

 

しかし、まだ何日かの実験が必要です。合わせて一番よい培養方法も(全滅前に)みつけなければなりません。

 

 

6月10日

採集日翌日にセットしたのは以下の4環境

よりよい環境の模索と同時にバックアップの目的もあります。

 

A:水族館でいただいた海水 / 小さな壜 / 止水

B:採集水のまま / 小さな壜 / エアレーション

C:人工海水と採集水の混合 / ヘンテコ理化学硝子/ 止水

D:人工海水 / 2Lペットボトル / エアレーション

 

 

 

6月11日 未明

A〜C は刺激を与えると発光が確認できました。しかし、Dは発光しませんでした。

死滅してしまったのかな、と思いながら翌朝、様子を見たところ、たくさんの個体が確認できます。どう見ても死んでしまった感じはありません。

 

ヤコウチュウは渦鞭毛藻の仲間でありながら光合成をするピロキスティスとは違い、光合成能を放棄した生物です。

生物の発光はルシフェリン(基質)とルシフェラーゼ(酵素)によるものですが、渦鞭毛藻の発光基質はクロロフィルと同様のテトラピロール骨格をもった構造で、その生合成にはクロロフィル生合成経路が関与していると推測されています。

 

さらに、中部大学の大場裕一准教授は

 

「安定同位体取り込み実験を行ないグリシンとグルタミン酸が生合成基質になることを確かめた。これはクロロフィルaが前駆体であることを間接的に示唆する結果である」(化学と生物 Vol. 45, No. 10, 2007)

と書いています。

同文章内にて、

 

餌を与えずにヤコウチュウを飼育したところだんだんと光らなくなったが、ケイ藻 (植物プラ ンクトン) を与えた ところ再び発光したというのだ(E. J. Buskey, S. Strom & C. Coulter: J. Exp. Mar. Biol. Ecol., 159, 37 (1992))。このことは
ヤコウチュウが食餌からクロロフィルを取り入れて、それをルシフェリンに変換している可能性を示唆している。

 

と、あります。

これを参考にするならば、採集水でもなく、水族館の海水(おそらく採集した海水を濾過したもの)でもない人工海水のDでは、海水に含まれている餌的なものがほとんどなかったので、腹ペコになり、光らなくなったものと推測できます。

 

まずは珪藻か・・・・・・あるぞ!

 

でも、我が家のキートセラス(浮遊珪藻)は結構微妙な状態で、次回のウニの発生実験までになんとかしないといけないと思っていたところ。

とりあえずこれを与えてみるか、またはシオミズツボワムシの種株が届いた時点で少しだけ与えてみるか悩んだ結果、今の段階で微妙なキートセラスを与えてコンタミするより、ワムシを与えてみることにしました。

そして、ワムシの餌はクロレラじゃないか! これも一緒に入れてしまえ!

ただし、クロレラを直に取り込むのかがわかりません。あるいは珪藻経由じゃないとだめかもしれないけれど、まあ、まずは生体維持ということでクロレラで培養したワムシでいってみます。

 

・・・・・で、すべての飼育容器にシオミズツボワムシを入れました。ツボワムシの培養水にはクロレラも混入しているはずです。しかし、昨夜光らなかったDにだけはクロレラを数滴足しておきました。

(明日からはワムシは濾して与えます

 

 

さて。4つの環境ですが、AとCは状態はよく、Bがそれに続いてまあまあという感じ。

実際にモバイル顕微鏡で観ても、AとCのものは触手が動いている個体が多く、Bはそれより少ない感じです。

Bのエアレーションはエアストーン付き(ただし、少しの泡しか出していません)。Dはストーンなし。

 

ピロキスティスは止水培養だし、ボルボックスたちもみな止水です。

もしかしたら下手なエアレーションなら、しないほうがいいのかもしれません。

しかし、もう少しだけ明らかな結果が出るまで様子をみることにしました。

 

 

6月11日 午後

 

桃みたいな形。左のものはワムシを捕食したたようです。

 

ヤコウチュウ/きらら舎

これははっきりわかります。

 

 

これはBにワムシを投入し、しばらくしてからエアレーションを止めて、水面に集合している部分を採集してみたもの。

2匹も捕食しているものもいます。

 

いったいどのくらい継続して培養ができるかはわかりませんが、とりあえず、試行錯誤してみます。

 

 

6月12日 午前

 

モバイル顕微鏡の Life is small. Company 白根さんから、

「ヤコウチュウをスポイトに入れてスライドガラスに押し出しているところを顕微鏡で見ると細胞の中の光が見えます」

と、LINEが来ました。

とりあえず、本日仕事の打合せで出かけなければならないので、その作業は夜にするとして(乞うご期待!)、昼間も光るというヤコウチュウを確認することにしました。

試してみたのは A C

A は光りませんでした。しかし、C はわずかですが光ります(くらい場所に持って行って確認)。少しでも光るということは概日性リズムはないのかもしれません。またはあるけれど、刺激でも光るのかもしれません。

 

もし、ピロキスティスに概日性リズムがあり、ヤコウチュウにないとすれば、光合成をするかしないかという違いと関係があるのかもしれません。Lingulodinium polyedrumという渦鞭毛藻には概日性リズムがあるそうです。この藻は、南カリフォルニアの赤潮の原因であることが多く、夜には江の島のヤコウチュウのごとく、青い生物発光でディスプレイが美しいそうです。これも光合成をする種です。

 

ピロキスティス/きらら舎

ピロキスティス

 

 

6月13日 朝

未明、4つの飼育容器のいずれも発光が確認できました。光の量は生体数を鑑みればほぼ同じ量とみなせるので、どの飼育環境も現時点では問題がないと思えます。

たしかにミジンコをエアレーションして培養している人もいますが、エアレーションして死なせてしまったことがあるため現在止水で培養しているわたしも、順調培養ができています。エアレーションに関しては容器のサイズと形状、泡の量など、生物によって最適なものをみつけなければならないようです。

また、昔からボルボックスは試験管やペットボトルで培養されていることが多いのですが、みな水面付近に集まっていることを考えると、もしかしたら水面積が大きいほうがいいのかもしれない・・・・・なんて思ったので、この実験もしてみたいと思います。

 

 

 

ボルボックス/きらら舎

ボルボックス

 

 

6月21日

環境を変えて4つの容器にしていましたが、そろそろ水が汚れてきたのと、エアレーションの効果はあまりないような気がしたので・・・・・

 

A:水族館でいただいた海水 / 小さな壜 / 止水 → 半量換水 / 小さな壜 / 止水

B:採集水のまま / 小さな壜 / エアレーション → 半量換水 / 小さな壜 / 止水

 

C:人工海水と採集水の混合 / ヘンテコ理化学硝子/ 止水

D:人工海水 / 2Lペットボトル / エアレーション

CとDについて。結局ヤコウチュウは水面にいるものがおおいので、ペットボトルでの飼育は適していないと判断し、Dのペットボトルの飼育水はすべて濾して、Cと合わせることにしました。

 

結果的に小さな壜での飼育が2つと、理化学硝子壜が1つ。

 

ワムシを与える量が少ないと、明らかに光らなくなり、個体数も少なくなるような気がします。CとDを合わせた時、すでに水の汚れもあり、合わせたところで個体数は少ないかもしれなかったのですが、とりあえずワムシを多めに投与しました。

すると、光が復活し、肉眼でも個体がわかるまでに復活しました。

しかし、壜の外からルーペで見ると、明らかに採集してきた時より小さなものが多く、また、2つつながったものもいます。ボルボックスも弱ってくると小さくなります。一時的にワムシが少なかったため、小さくなったのか・・・・・

しかし、他に飼育している生物へのブラインシュリンプやゾウリムシなどの投与量に比べると、ヤコウチュウへのシオミズツボワムシの投与量は多く、それでも維持がぎりぎりということは、どれだけ、ワムシを消費するのか、または、シオミズツボワムシだけでは栄養が偏っているのかもしれません。

ワレカラは珪藻なども食します。Aの容器にはキートセラスと海水クロレラも投与してみようと思います。

 

6月26日

昨日25日の夜から、容器を叩いて光るか否かの実験をしました。部屋の電燈が灯っている間、容器の周りを暗くして容器を叩いてみるも、光ったのは1つの容器だけ。しかも、青い点は2つほど。

就寝後、起き出して真夜中に容器を叩くと光が増えていました。

深夜3時では、すべての容器の水面が光りました。

やはり、確実に昼より夜のほうが光るようです。

 

朝になってワムシを与える時間になりました。

A:水族館でいただいた海水 / 小さな壜 / 止水 → 半量換水 / 小さな壜 / 止水

B:採集水のまま / 小さな壜 / エアレーション → 半量換水 / 小さな壜 / 止水

この2つの容器はほぼ同じ条件になってきているのと、毎日ワムシを投入している(※)ため、飼育水が増えてきたこともあり、ABを少しづつ合わせた容器Eを作り、これをエアレーションしてみることにします。

 

※ ワムシの投与について
  1. 培養しているワムシを適量濾す
  2. 海産クロレラに入れる
  3. これを小さなペットボトルに移す
  4. 培養しているボトルには濃縮クロレラを入れておく

 

こうして小さなペットボトルに1日分の給餌用ワムシを作って飼育壜に投与

Categories: 生物室

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