サンショウウニ
現在、きらら舎カフェ水槽にはいろいろな種類のウニがいます。あまり大きな水槽ではない(60cm)ので大きくならないウニがいいのですが、シラヒゲウニは恐ろしいスピードで巨大化しています。
しかし、シラヒゲウニの骨格は美しいです。
販売されている骨格標本で薄いパープルのものがそれ。
ピンク色のナガウニやムラサキウニ、バフンウニ、アカウニに比べて殻が薄く壊れやすいため、小さなうちに死んでしまったウニから骨格標本を取る場合には、かなり気を使います。
さて今回はサンショウウニ。サンショウウニ、キタサンショウニなどもいますが、これは恐らくハリサンショウウニだと思います。
昨年の春に、採集者さんからのサブスクでいろいろな生体と共に届いたウニです。
シラヒゲウニよりも古参で、サイズは30mmほど(届いた時は12mm更新時くらい。更新時40mm)。
棘が紅白の縞々で可愛いです。肉食なので、海藻よりもシラスなどを好んで食べます。餌が足りないと他の生物を襲いますw
きらら舎カフェ水槽では基本、海藻飼育なので大きくならないのかもしれません。
ハリサンショウウニ
Temnopleurus reevesii (Gray, 1855)
正形類(まん丸い形のもの)
カマロドント目
サンショウウニ科
コシダカウニは些細な刺激で吹きます(放精します)。
サンショウウニは今年はまだ吹いてなく、現在は3つだけなので、雌雄の確認を兼ねて、放精・放卵をさせました。
オスは細いくねくねした線を描いて精子を放出し、やがて、それが拡散して水が白濁してきます。
メスは放出した卵を管足をリズミカルに閉じては開き、遠くに飛ばそうとする動きをします。
今回は、人為的に放精・放卵をさせたため、予めきれいな海水に入れています。
未受精卵をいくつかの容器に取り分けて、希釈し、媒性させました(室温 25℃)。
未受精卵は楕円形のものが多く、正円のものはほぼゼロです。
これはかなり正円に近いもの。
2023.9.17 16:17
しかし、受精して受精膜があがるとすべての受精卵は正円になります。
2023.9.17 17:02(2細胞期)
2023.9.17 17:32(4細胞期)
2023.9.17 17:39(8細胞期)・・・別の個体
2023.9.17 17:39(8細胞期)・・・別の個体
2023.9.17 18:45(32細胞期)・・・別の個体
2023.9.17 19:35(64細胞期)
2023.9.17 20:54(桑実胚期)
2023.9.18 9:24(胞胚/孵化後)
桑実胚から胞胚になり、やがて受精膜の中で回転を始めます。これはその後、膜を破って孵化した胞胚です。
受精膜がなくなると、また楕円に戻っていました。
地球の北極と南極のように、ウニの卵にも極があり、植物極と動物極と呼ばれています。
高校などの授業でウニの発生の図があった場合、下が植物極で上が動物極です。しかし、その後、ウニに変態し、ウニを図解する場合は逆になります(※1)。
植物極の細胞が内部に遊離してきて(一次間充織)植物極板を引っ張ります。それで、胞胚腔内へと折れ曲がって原腸の陥入が始まります。
この陥入口が原口とよばれ、幼生の肛門となります。陥入した部分から、細胞がさらに遊離してきて(二次間充織)引っ張られ、原腸はどんどん伸びます。
この時期を原腸胚といいます。
陥入した部分がやがて消化器官となり、原口の反対側(実際には前方へと傾斜)に到達して口ができます。
2023.9.18 13:48(プリズム幼生)
この頃からキートセラス(餌)を与えていきます。
原腸陥入を引き起こした一次間充織は骨片へと変化してまずは二か所に集まって三角形の底面の角を作っています(上の写真の尖った部分)。
このせいで三角形に見えるため、プリズム幼生と呼ばれます。
写真の毛のように見える部分は繊毛です。これで海中を泳ぎ回ります。
2023.9.18 17:45(4腕プルテウス幼生初期)
骨組がわかりますね。
この骨は偏光板を使ってモバイル顕微鏡で見ると、虹色に輝くのでよくわかります。
2023.9.19 8:15(4腕プルテウス幼生)
店頭でお渡しした分は、密度が高いので、本日から3日くらいの間に2倍希釈をしてください。
【換水を兼ねた希釈】
- 培養フラスコの予備がない場合は、現在の分を一度、100均のドリンクボトルなどに全部入れて、30分ほど静置する
- この間に培養フラスコを水道水で洗って水を切っておく
- ドリンクボトルの上半分を丁寧にゆっくりと培養フラスコに注ぎ入れる
- ドリングボトルと培養フラスコに、きれいな人工海水を足す
餌が少ないと、腕の先から骨が飛び出してしまいます(骨が飛び出す原因はそれだけではないと思いますが)。ただし、あまり多くいれると水質が悪化します。
他の生物でもそうですが、飼育下で、卵から孵化したものが親と同じ形になるのは約1割です(1割が生き残ればOKとするという意味)。
ウニの受精卵が変態までいくのはそれよりははるかに少ないので、どんどん減ってしまっても、あまり気にしないようにしてください。
それよりも精鋭部隊を密度低く、丁寧に飼育し、一匹でも多くウニに変態させられるように頑張りましょう。
2023年11月16日(木) 特別企画です
来週、お茶大の二次拠点活動「アカウニの発生実験」があります。 >>詳細
そこで、現在 3Lビーカーで飼育しているサンショウウニの8腕プルテウスを変態誘導しようと思います(止水飼育に切り替えようと思います)。
・・・と、いうわけで、現在の販売分は8腕プルテウス(クリームケース入り)です。
クリームケースに6体入れています。
このまま飼育してモバイル顕微鏡のアナトミー or エッグ でケースごと観察してみてください。
さらに、このままではなく、2体×3容器に分けると変態確率もあがりますしバックアップにもなります。
一応、2日に1滴くらい、餌を入れてください。
変態は・・・・・
- 胃腔の横部分にウニ原基ができます。
- 内部に管足のようなものが見えてきます。5本の管足の元です。
- ウニ原基が大きくなり、胃腔は萎縮してきてやがて餌を食べなくなります。
- アポトーシスによって腕が短くなってきます。
- 内部に棘のようなものも見えてきます。管足が体の外に飛び出してきます。
- 腕がなくなって丸いウニの形になります。
以前は変態誘導にライブロックを入れていました。ただ、なくても変態し、沈殿した餌などを食べているようでした。アオサなどを入れるとそれが稚ウニの餌になります。変態誘導にもなるようです。
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