ボルボックス培養にはボルヴィック・・・というのが今までの常識でした。
pHを上げる(アルカリ性に寄せる)ために石灰石や焼いた貝殻を入れたり、栄養分としてハイポネックスやメネデールを入れたりと、いろいろな工夫もしました。
もちろん、先人の行っていた二層培地で培養してみた時期もあります。
しかし結局は、頻繁な植え継ぎで命をつないできました。
水は都市伝説的だとも思いながら、多くの研究室でプランクトンを培養する際に使っているというので、きらら舎でもボルヴィックを使っていました。
2020年末で、日本の代理店アサヒ飲料が契約を終了したため、国内のボルヴィックはなくなりました。
その後は並行輸入のものを使っていますが、これもボルヴィックの採集地の水が枯渇するというニュースもあるので他の水を探さなければなりません。
そんなある日、ホームセンターでアルカリ度の高い軟水をみつけ、それを採用してみたところ、弱々だった Volvox carteri(以降カルテリ)が復活したのです。
現在、ボルボックスは3種類がいます。それぞれに適した水があるのかもしれませんが、とりあえずはV. aureusをメインに水比較実験してみます。
まず硬度の実験。
基本的には平行輸入したボルヴィックで培養して、それとも比較していきます。
今回の実験No.01で使うのは「磨かれて、澄みきった日本の水」(伊藤園)。
これには2種類あります。採集地が異なっていて、成分もそれぞれ違います。
ボルヴィックよりpH値が高くそれぞれpH7.6とpH7.7。この違いは誤差の範囲とします。違うのは硬度。
一般に水の硬度は含まれているカルシウムとマグネシウムの量で決まります。
同じくらいのpHなら、カルシウムの量が多いほうがいいのか、あまり関係ないのかという実験ができそうです。
ただし、天然水なので季節によって含有量が異なるようです。雨が多い季節は溶けているミネラル分が減るのでしょう。四季別での実験も必要かと思いますので、実験には水の購入日と賞味期限期日を合わせて記録してみます。
採集地 | 長野市安曇野 | 島根県浜田市 |
硬度 | 21 | 83 |
pH値 | 7.6 | 7.7 |
ナトリウム | 1.5mg | 1.3mg |
カリウム | 0.03mg | 0~0.5mg |
カルシウム | 0.5mg | 6mg(1~6mg) |
マグネシウム | 0.2mg | 0~0.3mg |
ちなみに、ボルヴィックは
採集地:フランス(オーヴェルニュ地方)
ナトリウム:1.16mg
カリウム:0.62mg
カルシウム:1.15mg
マグネシウム:0.8mg
pH:7.0
硬度=(カルシウム量mg/l×2.5)+(マグネシウム量mg/l×4)
※マグネシウム量mg×4.1という考え方もあります。
これでボルビックを計算すると
(11.5×2.5)+8×4=28.75+32=60.75mg
島根県のものは、公式WEBサイトではカリウム 0.12mg、カルシウム 3.2mg、マグネシウム 0.08mgで、硬度 83mg/L、pH 7.7とされています。
今回使用した水の賞味期限は「信州:2024年2月」「島根:2024年1月」でした。この月表示が採集&濾過&ボトル詰めの月としておきます。
信州と島根でカルシウムの効果がわかります。
島根とボルヴィックではカリウムの効果。
3種類を比較してpHの効果がわかります。
2022年3月24日セット
別途ボルヴィックでもセットしてあります
島根のボルボックスが一番殖えればカルシウムが多いほうがいいということ。
信州のものが殖えればカルシウムが多ければよいというわけでもないとなります。
島根が殖えて、信州が殖えなければ(差があれば)pHが高いことよりカルシウムの量が大切ということになります。
ボルヴィックが一番殖えれば都市伝説は正しかったという結果になりますね。
乞うご期待!
3/24 8:50
3/24 17:50
セットしてから約9時間が経過。本日の東京の日没17:56に合わせて消灯するので、その前に確認したところ。
ボルヴィック・・・中間に浮かんでいる個体が多い
信州・・・・・沈んでいる個体が多い
島根・・・・・ボルヴィックより上にいる個体が多い
照明はすべて真横からあてています。
3/25 13:50
セットしてから約29時間が経過しました。
信州の水に入れたものは数が減っています。
島根とボルヴィックは中間に浮いていて数はまだ殖えた印象はありませんが、元気な気がします。
島根の水は季節によってカルシウムの量が変わるようですが、賞味期限が24か月とのことなので、この水は1月に採集&ボトル詰めされたとすれば、降水量が少ない時期なのでカルシウムは多いと考えられます。
まだ1日しか経過していませんが、大切なのはpHではなくカルシウムの量であるという仮説が濃厚になってきました。
3/29 12:30
信州は個体は元気ですが全く殖えていません。
島根とボルヴィックは同数くらいに殖えていますが、ボルヴィックのほうが沈んでいる個体が多く、島根のほうが粒も大きくて浮かんでいる個体が多くあります。
カルシウムは多めのほうがよいという判断。
信州のものも殖えてはいませんが、粒も大きく緑色で浮かんでいる個体が多くあります。
pHが高いことは元気さにつながっているのかもしれません。
ただし、pHが上がりすぎもどうでしょう。
3/31 10:30
本日をもって「磨かれて、澄みきった日本の水」(伊藤園)の2種類とボルヴィックの水比較を終了します。
この時点で
上がボルヴィック、下が島根。
ボルヴィックは一定期間はよいものの、突然、沈んでいる個体が増えてある日、緑色個体がいなくなってしまうということが起こります。
今日はその前兆で、だいたい、このあたりで植え継ぎをします。
下の島根は順調ですね。緑色も濃いです。
ちなみに信州。
殖え方は少ないものの、元気な個体が維持されています。
アルカリイオン水 vs ボルヴィック
3/31 10:00にセットしました
ボルビック | アルカリイオン水 | |
ナトリウム | 1.16 | 0.8 |
カリウム | 0.62 | 0.16 |
カルシウム | 1.15 | 1.3 |
マグネシウム | 0.8 | 0.64 |
pH | 7 | 8.8~9.4 |
アルカリイオン水でもそこそこ培養できるみたいですが、あまり差は見られませんでした。
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