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今までたくさんの生き物を飼育・培養してきました。

ベニクラゲやワレカラ、ウミホタルは夏に採集して冬を越すことが現在の課題で、

逆に冬に生まれたミズクラゲやアカクラゲは夏を越すまで生存させることが課題です。

 

犬・猫・うさぎ・ハムスター・ハツカネズミ・シマリス・鳥・爬虫類・両生類・魚・昆虫・無脊椎動物・微生物・・・・

いろいろ飼ってきた中で、一番難しいのがボルボックスです。

クリオネよりも、です。

 

順調に殖える時と一気に全滅してしまう時があります。

その時期で環境を少し変えて、植え継ぎの日もずらしたボトルをたくさん維持していることですべての個体の全滅を防ぎながら今に至ります。

 

ボルボックスを観察するとわかるように、丸い体の表面には小さな粒が並んでいます。これが体細胞です。一つ一つがそれぞれ生きていて、細胞壁を形成しています。

それぞれが2本の鞭毛をもち、同じ方向にくるくる回り、光の方向へ移動します。この回る行動が名前の由来でもあります。

光に向かって移動する理由は、光合成の効率化のためと推測されますが、そのためにエネルギーを使っているのでプラマイゼロなんじゃないかと思ったり・・・・・

 

 

和名:オオヒゲまわり

学名:Volvox(ラテン語で「回る」という意味のVolvoから)

 

東京工業大学では、死んだボルボックスに再び鞭毛運動させる“ゾンビ・ボルボックス法”を確立し、ボルボックスの鞭毛運動がカルシウムイオンで制御されることを実証しました。
ボルボックスは前端部から後端部にかけて鞭毛の性質を変化させることで、走光性や光驚動反応(ヒカリキョドウハンノウ)を効率的に行うのだそうです。

 

この体細胞が一層並んで細胞壁が作られている内部は空洞で、ゴニディア (gonidia) と呼ばれる生殖細胞が見えます。娘細胞と呼ばれる場合が多いこの細胞は、さらに拡大すると内部にすでに小さな娘細胞を抱えていることがわかります。

 

娘細胞は最初は体細胞が内部に並んでいます。逆に成体では内側にある生殖細胞が、胚では外側にあります。胚が成長し成体となる過程で、くるりと裏返るインバージョン(inversion:反転)と呼ばれる現象が起こります。
過程を追って観察できれば、胚の一方の極にある十字型に切れた穴(フィアロポアー)の周りが外側に反り返り、もう一方の極へと徐々に伝わり、最後には表裏が逆転し、生殖細胞が内側へと入ります。

いつかこれを動画で撮影するのが夢です。

 

ボルボックスの体細胞はクラミドモナスという単細胞の生物ととてもよく似ていて、これが群体をなしていると考えられた時代もありました。

娘細胞はやがて親の体細胞を突き破って外に出ていきます。

こうして娘細胞を放出した親は細胞死を起こして死んでしまう・・・・・のですが、体細胞だけで生存する説を唱える人もいます。

実際に体細胞だけで一旦木綿のごとく水中を浮遊しているものがありますが、その体細胞ははたして生きているのか、これもいつか調べてみたいと思います。

 

今はくるくる回るボルボックス、葉緑素をピンク色に蛍光させた姿を撮影したりして楽しんでいます。

 

 

 

質問:ボルボックスは植物なのに、なぜ鞭毛を持って移動するのか

ところで。
2019年7月下旬カフェで開催するワークショップにご予約いただいた方から上のような質問がありました。
当日はウニの受精発生実験やメダカの卵観察なども行うため、ゆっくりボルボックスの説明をしている時間がないと思うので、ここに記しておくことにします。

 

前述のとおり、移動するのは光合成を効率よくするためだと考えています(他にこれを超える理由も思いつかない)。

たんぼの日陰の部分にじっとしているより、光が当たるほうへ移動して、一日中、よりたくさんの光を浴びて光合成をするほうがより多くのエネルギーを得ることができるのでしょう。

リンネの3界では、植物は「生きているが動かない」という定義があり、多くの人は「植物=運動しない」という認識なのだと思いますが、おじぎそうは葉に触れば葉を閉じるし、ハエ取り草は虫が止まれば、パクッと捕虫器を閉じます。
そこまでの敏速な運動ではなくても、多くの植物が花を光の方に向ける運動をしています。

さらに・・・・・

動物と植物が明確に区別されるわけでもないと思うのです。

定義はしょせん、人間が考えたもの。

植物と動物の定義の中間があるほうが当たり前のような気もします。

 

今、培養しているものの中に渦鞭毛藻の仲間のヤコウチュウという生物がいます。

もう一つ、培養している生物ピロキスティスも渦鞭毛藻の仲間です。

「藻」とついているので植物と思いがちですが、真核生物に分類されます。

ピロキスティスは光合成をしてエネルギーを得ています。
概日性リズムを持ち、夜になると刺激で青く光ります。

一方ヤコウチュウは藻でありながら光合成を放棄した生物です。

光合成の代わりに、プランクトンを捕食します。我が家のヤコウチュウが光らなくなった時、それは死んだわけではなく、発光の素となるルシフェリンを作る素がなくなったためでした。

シオミズツボワムシと海水クロレラを与えると、再び光るようになりました。

・光合成もするけれど、運動もする。それは光合成の効率化のためであると考えられる。

これが質問への回答です。

 

 

 

Categories: 生物・植物室

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かよこ さとう ()

Website: https://kirara-sha.com/

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