数年前まで、きらら舎ではローマングラスを扱っていました。
一つ一つ撮影するのが大変だったので、いつの間にか、店頭でのみの販売となっていましたが、A.D.NÉEL表参道店オープンに合わせて、新しいものも仕入れてきらら舎でも販売を開始します。
ローマングラスは以前のブログでは説明していたのですが、きらら舎一号館のノートでは書いていなかったので、あらためてご紹介してみたいと思います。
ガラス製造の歴史を辿ると、紀元前2300年頃にメソポタミアで作られたビーズがあります。
ガラス製容器が作られるようになったのは紀元前1600年頃と言われています。
そしてもっとも多くの記録を見つけることができるのは紀元前1500年頃のエジプトです。
鉛ガラスといわれるエジプトのガラスは現代のものように透明感はなく、トルコ石のような青緑の不透明なものでした。
やがて技術は進化し、宙吹きと呼ばれた吹きガラスの技法が生まれます。
当時エジプトはローマ帝国に服属されていましたので、ローマ帝国の権力下で量産され、後にローマングラスと呼ばれるものとなりました。
それまでのガラスはお金持ちや権力者だけが所有することのできる宝飾品でした。しかし、吹きガラスによって量産されたものは一般庶民の手にもわたり、さらにシルクロードを通って広く伝わっていきました。
ローマ帝国時代のこのガラス器、またはその破片は様々な土地で地中に埋まり、現代になって掘り起こされました。
乾いた沙漠から掘り出された硝子は表面が銀化して虹を纏ったような姿となりました。広義ではローマングラスはローマ帝国下で量産された吹きガラス製法でつくられたガラス器すべてを指しますが、一般的にローマングラスというと、この虹を纏ったガラスとなります。
この銀化した部分を「パティナ」と呼びます。地中から掘り起こされたガラスはクリーニングされます。その際に、パティナもたくさん剥がれておちます。ミニチュア試験管入り標本の「妖精の鱗粉」はこの剥がれ落ちたパティナです。
黒い紙に接着剤を薄く塗り、妖精の鱗粉ことパティナを貼るときらきらしてとてもきれいです。
たとえば、この欠片。セメントみたいな部分がありますね。これをクリーニングで剥がします。
残っているものもありますので、わざとここを剥がしてみて、下に隠れている部分を見てみるのも楽しいです。
一緒に剥がれてしまう部分もありますので、これはこれで何かに活用してみてください。
ローマングラスの纏っている虹色は光の干渉によるものなので、光源や角度によって出現する色も全く変化します。
『鉱物レシピ』の「鉱物と光沢」というテーマでまとめたページにローマングラスのことを少しだけ紹介しました。
もともと、この本はきらら舎とカフェのワークショップの集大成的なものだったのですが、「鉱物」でも「結晶」でもないので多くは書かず・・・でも、モルフォの青色やビスマスの虹色と並べたかったので、こそっと書いておいたものです。
さきほどの欠片。
ガラスにも化学反応時に刻まれた模様が見えます。
これは最初からあったものではないと思われます。時間が作ったレリーフというのも魅力ですね。
さらに、欠片を光に翳してみてください。
パティナの輝きは消え、本来のガラスの色がわかります。
ローマングラスは明日からきらら舎二号館にて販売開始します!
ただし、やはり肉眼でみて、実際にいろいろな角度で眺めた場合とは違いますので、機会があればカフェにてお選びください。
カフェでは入口付近の棚の一番上の抽斗に入っています。
抽斗ごと、お席に運んでゆっくりお選びください。
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