今日から令和が始まる・・・・・という日記ではなく。
先週の土曜日(4/27)にやってきた蚕の話。
孵化したばかりという蟻蚕(ぎさん)8頭がある日突然プレゼントされた。
きらら舎生物部(と勝手に自分たちで呼んでいる)のめるちゃんのお母さんが孵化させたもの。キッチンペーパーの上に細長い蟻みたいなものがくっついている。黒くて蟻みたいなので、孵化直後の蚕は蟻蚕と呼ばれる。よく見ると毛が生えているので、毛児(けご)と呼ばれる場合もある。
当日はカフェ営業日、その翌日はA.D.NÉELヴィーナスフォートでワークショップだったので、土日はゆっくり観察はできなかったものの、日曜日朝には下に敷いたキッチンペーパーの下に入ってしまっていた2頭を救出したり桑の葉の追加などは行った。
たった1晩、キッチンペーパーの下に入り込んでしまって喰いっぱぐれていた個体は他のものより2まわりほど小さい。
逆に言えば、成長のスピードが著しく早いということになる。
いただいてから2日後にようやく幼虫をじっくり観察することができた。
渡された当初より頭をのぞく体部の色が薄くなっていた。
月曜日。
一日ずっと蚕について調べていた。
養蚕に使われる蚕のルーツは黄河や揚子江流域で野生のクワコを家畜化したものだったらしい。今から5~6000年も前のことである。中国の宮廷内だけで極秘に行われていたものがやがて、異民族を支配するためのほうびとして絹が使われるようになり、中近東からローマまで広まっていった。「シルクロード」(絹の道)である。
養蚕が日本へ伝わったのは弥生時代と言われる。稲作と同じ。実に長い歴史を持つ。
明治時代が日本の養蚕の隆盛期で、日本の近代化の礎を築いたといわれる。生糸の輸出では1935年前後がピークであった。この外貨獲得で日本は近代化に必要な機械などを輸入することができというわけである。
明治以降の皇后は、産業奨励のため養蚕を行い、現代にいたるまで継承している。
令和となった今は、蚕飼育は美智子さまから雅子さまへ引き継がれたのだろうか。
母は疎開していた時、ちょうど近くに桑畑があったので、玩具やペットなどを持てない戦時中に蚕を飼育することができたという。何頭かわけてもらったものを紙の箱で飼育していた。そのため、周囲の大人が呼んでいたように、今でも蚕に接頭辞を付けて「お蚕様」と呼ぶ。
蚕を渡された時、飼料について確認された。
「人工飼料で育てるか、桑の葉で育てるか。」
一度桑の葉を食べると、もう人工飼料は食べないのだ。
しかし、蚕が来たものの、人工飼料は手元にはない。桑の葉は一応、数枝付いていた。それで、桑の葉で育てることを決める。
桑の葉は鳥が種を運ぶため、都内でもいろいろなところに自生しているという。探してみたものの(怪しいおばさんだったろう)、母が「違う葉っぱ食べさせると死んじゃうのよ。」というので捜索中止してネットで注文した。しかも複数・・・・・。複数注文したのにはわけがある。
飼育しているツダナナフシ(正確には卵の維持管理だけしていて、孵化した成体は甥の担当となる)はアダンという樹の葉しか食べない。
しかも、その食葉量は笑えない。
ツダナナフシの飼育はアダンの栽培から始まる・・・・・。
さらに、昨年の夏のこと、料理用に栽培していた小さな山椒の樹にアゲハの幼虫が付いた。あっという間にすべての葉は食い尽くされ、その時にまだ終齢ではなかったため、追加で山椒の葉を買ってきて与えたことがある。小さな幼虫の喰いっぷりに驚いた。
(さらに虫に丸坊主にされた山椒の樹が、きちんと再生したことにも驚いた。)
それで8頭分の桑の葉は、苗木1本では賄いきれないと予測して、マルベリーとして販売されているものも含めて別々の店で6本注文をした。
日本の文化を支えた養蚕は同時に桑の葉の栽培にかかっていたのだ。その証拠に、小学校の頃に学んだ地図記号。水田、畑、果樹園・・・・・ざっくりとした中に、茶畑や竹林など植物指定の記号があって、そこに桑畑もあった。お茶や竹は一般的な畑とも雑木林とも違うのはわかるが、なぜ桑が・・・養蚕が身近ではなかったわたしには違和感があったが、そういうわけだったんだ。
飼育について調べていると、キットもいろいろ販売されている。教育機関でも生徒に蚕飼育をさせているところがある。
しかし、ここで問題点を見つけてしまった。
せっせと世話をして、営繭させ、羽化して成虫(カイコガ)となり、交尾産卵させる。
1匹の雌が産卵する卵の数は500~800。
これがすべて孵化をしたら、どうなる?
しかも、産卵する雌は1匹ではないだろう。
養蚕農家は繭を冷凍したりゆでたりして糸を取る。つまり羽化させる前に殺してしまう。
クラフト用・標本用の繭殻を仕入れているところでは、糸取り用の繭も販売していた。試してみようと思ったこともあったが、
「糸を取っていくと繭が薄くなり、中の蛹が透けてみえてきたら、糸取りは終了」とあった。
これ以降に取れる糸は弱いからという理由であるが、繭の中に死んだ蛹が見えてくるのはどうもいただけない。
さらに、蛹が入っている繭を鍋で茹でるのにも抵抗があったので実現はしていない。
飼育キットを販売しているところは、成虫の寿命には触れているが、生まれた卵についてはほとんど触れていない。糸取りキットも販売している前述の店だけが、卵は燃えるゴミにだそうと記載している。
虫が短命なのは、蚕に限ったことではないが、成虫になって餌は食べない(そもそも口がない)というのも少しだけ心が痛い。さらに卵をどうしようと思う。生まれてすぐにゴミに出すのが正解なのか・・・・・
蚕は人間が作った虫である。自然界には存在しないし、自然界に放っても生きてはいけない。
何回か飼育すると、蚕との向き合い方がわかるかなと思いながら、飼育容器に敷いたキッチンペーパーを交換している。
5月8日(水)
ばたばたとGWが終わった。
最初に蚕と一緒に桑の葉が付いた枝もいただいた。
桑の葉は濡らしたキッチンペーパーで包んでビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保管している。
与える時には出して冷蔵庫臭さを除去するのと温度を上げるためにぬるま湯で洗って、水分をよく拭き取って与える。
先に葉を用意してから飼育容器をリセットする(下に敷いている紙を糞と食べ残した葉と共に捨てて、新しい底紙を敷く)と葉の温度もちょうどよくなるのだ。
桑の苗木とマルベリーの苗木はGW中に届いていたのだが、最初はこれを食べなかった。
最初に食べた桑の種類以外は食べないのだろうか。
冷蔵庫の桑の葉はさすがに1週間以上経つと萎れたりやや茶色っぽく変色してきたものもあったのだけれど、できるだけ青くてみずみずしさが残っているものを選びながら与えていた。
ところが、今朝は、マルベリーの新しい葉(上の新芽の横についていたもの)と冷蔵庫の古い葉の両方を与えたところ、全員マルベリーの葉に移動していた。
なんだ。食べるんじゃん・・・・・
とりあえず、購入した葉が使えそうなので一安心である。
ここ数日、気温が低かったせいか、成長は遅れているようである。
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