2023年もミズクラゲ倶楽部やります! >>ミズクラゲ 2023
明日と来週の理科室カフェは2週連続で生物部の日になってしまいました。
この季節は仕方ないのです。
冬の間、な~んにも採れなかったのが、急にいろいろ出現しだす季節なのです。
採集する生物は、基本的に採集して寿命まで飼育するというものではなく、繁殖させて累代飼育できるものを選んでいます。
先日、ボルボックス友だちに「クラゲの魅力って何ですか?」って聞かれました。
- ポリプを半永久的に維持できること
- まだまだ解明されていない謎が多いこと
- いろいろな世代を楽しめること
と、答えました。
今回届いたクラゲはミズクラゲです。
クラゲといって多くの人が思い浮かぶアレです。
クラゲの中では最も研究が進んでいるクラゲではあります。
ミズクラゲは1700年代より分類学をはじめ、発生・生理・生態・行動・進化などさまざまな分野から研究がなされてきています。
クラゲ世代の生態学的な調査研究は、1960年代後半くらいから国内外で盛んに行われてきていますが、世界中の沿岸に生息しているにもかかわらず、その生息環境についてのデータはほぼありません。特にポリプの自然生息地の発見が非常に困難なため、ポリプが自然状態でどのように生活しているかはほとんど明らかにされていません(日本では、1999年に鹿児島県鹿児島県谷山の長水路で三宅裕志さんの研究チームが初めて自然生息地を発見しました)。
クラゲの成熟(有性生殖のための卵と精子を持つこと)には、サイズが問題になってきます。エダアシクラゲやカギノテクラゲなどの小さな個体であれば、水槽内で成熟することもできそうですが、ミズクラゲやアカクラゲ、タコクラゲは巨大な水槽がない限り不可能でしょう。
自然界でポリプを探すことが極めて困難なため、ポリプを得るためには、成熟したメスのクラゲを探します。
ミズクラゲが浮いているのを上から見ると、特徴的な四葉のような模様があります。オスや、未成熟なメスの場合はこのマークがくっきりしています。
成熟したオスが水中に放精し、それを成熟したメスのクラゲが取り込んで育児嚢の中に受精卵を作ります。育児嚢はフリルのようなビラビラしたもので、浮いているクラゲの四つ葉マークはこれによって不鮮明に見えます。
受精卵は育児嚢の中で発生が進み、やがて孵化してプラヌラ幼生になります。
可能であれば、今年は孵化前の発生途中の受精卵も観察できればいいなあと思っています。
『鉱物のテラリウム・レシピ』でミズクラゲの生活史を紹介した際に、
「プラヌラが泳ぎだし、どこかに固着してポリプに変態する」と書きました。
ポリプは海水温の低下により、横体化(ストロビレーション)してエフィラ(クラゲの赤ちゃん)を出します。そしてクラゲは成熟して有性生殖します・・・・・という生活環の図を書いたのですが、実は、そう簡単でもないことが数年前からの実験でわかりました。
生活環というより、逆行(再生・若返り)もするし、ショートカットもあるのです。
このクラゲは特別な場所で採集者の方に依頼して捕獲してもらっています。
プラヌラがポリプにならずに直にエフィラを出すこともあります。
プラヌラを採取すると、母クラゲの育児嚢の断片が紛れ込むことがあります。そして、それはまるで命を持っているかのように動きます。
全てのプラヌラがエフィラになるというのでもなく、年によっては(あるいは親個体によるのかも)ポリプになるほうが多いものもあり、たいていは混在しています。
ポリプがプラヌロイド(プラヌラのようなもの)を出して殖えるサカサクラゲやタコクラゲでは、プラヌラよりもプラヌロイドのほうが大きいため、そこから変態したポリプも大きい傾向にあります。
ミズクラゲもポリプがストロビレーション(横体化・ストロビラ化)して出たエフィラより、プラヌラから直に出たエフィラのほうが小さく弱いです。
直にエフィラを出した後、ポリプが残りますが、これも小さいため弱いです。
でも、そのエフィラやポリプを育てるのもまた、一つの醍醐味。
プラヌラからポリプになったものは元気なので、結局これが殖えるため、あまり心配はいりません。
長年、いくつかのクラゲを飼育していて気づいたことがあります。
鉢虫綱・旗口クラゲ目のクラゲ(ミズクラゲ・アカクラゲ)のポリプは老化するんじゃないかということ。
年々、出るエフィラが奇形だったり、数が少なかったり、小さかったりしています。単純に飼育環境の問題かもしれませんが。
同じ環境でも、鉢虫綱・根口クラゲ目のクラゲ(タコクラゲ・サカサクラゲ)ではそのようなことは感じません。
もう7年も飼育していますが、どちらも変わらずクラゲを出します。
違いは何か?
分裂で殖える場合、つまり、ミズクラゲとアカクラゲのポリプは殖えてもテロメアは修復されないのではないかという考え方です。クローンのテロメアが修復されないのと同じです。
しかし、プラヌロイドは有性生殖と同じように、テロメアが再生されているのではないかという仮説。
どこかに論文がないか探しています。
・・・・・なんて難しい話はおいておき、ミズクラゲのプラヌラを販売します。
初めて飼育する方でも簡単です。詳細、お問合せください(簡単な育て方は、このページの最後に加筆しています)。
土日であってもレターパックプラスを選択されれば同日中に発送します。
ご注文の時期によってはポリプになってしまっている場合があり、また、販売期間は短いので、お早目にご注文ください。
プラヌラは泳ぎ出してからおよそ5日で変態します。
しかし、昨日届いたものは、いくつかが変態始まりました。まずはこうやって動かなくなり、少しづつ形が変わってきます。
これはエフィラになりそう・・・・・
2022年5月16日(月)
プラヌラが変態する際に、ストロビレーション時にできるくびれが出ることがわかりました。
この2つのプラヌラにくびれができ始めました。
くびれはやがて少しづつ消えて、先が太く、根本が細いという形に変わってきました。
下の左側のものは茎というか柄というか・・・がだいぶ細く伸びました。
右下ものは確実にエフィラの形になり、拍動が始まりました。
初めてプラヌラを飼育してみる方へ
海水生物の飼育ってちょっと敷居が高いと感じている方も多いでしょう。
とりあえず、クラゲのプラヌラからの飼育は簡単なので、海水生物飼育デビューにはぴったりです(マニアックですが)。
まずは人工海水の素を買ってください。
2Lのペットボトルにカルキ抜きした水をいれます(水を入れてフタを開けて数時間置くだけでよいです)。
これにキッチンスケールなどで量って68gの人工海水の素を加えます。
濃度は結構アバウトでよいので、58~68gくらいであれば問題ありません。
わたしは海水よりも少し比重低め(2Lに60g)で作っています。
何度かよく振って溶け残りがないようにして、一晩置いたものを使います。
大きな水槽やたくさんの水槽を維持している場合は、バケツの中でポンプを使って水流を起こして海水の素を溶かすので2時間ほどで使ってしまいますが・・・・・
海水の準備ができたら100円ショップなどで売ってる直径10cmくらいの浅めの保存容器に海水を入れます。これが飼育容器になります。
餌も買っておきましょう。
小さなタッパを用意して、人工海水を入れ、そこにコーヒーマドラーにすりきり半分くらい、ブラインシュリンプの卵を入れ、よくシェイクして温かいところに置いておいてください。
28℃で24時間で孵化します。気温が低いと、孵化までもう少し時間がかかります。
たくさんの生物を飼育している場合は、大きなびんでエアレーションをして孵化させます。小さなタッパでの孵化があまり上手くいかない場合は、500mlのペットボトルに300mlほどの海水を入れて、キャップに穴をあけてチューブを通し、エアレーションするとよいです。
この容器は「キートセラスの培養」で紹介しています。
送るプラヌラはボトルに入れてあります。用意してある容器に移して涼しいところに置いてください。ボトルにはすでにポリプになって壁面にくっついているものもいるかもしれないので、注意してみてください。もしくっついていたら、こちらにもプラヌラ水を少し入れて新しい海水を追加して、容器2つで飼育してみてください。
モバイル顕微鏡をお持ちの方は、SERIAで売っている透明で3つセットになっているクリームケースに少し入れて、観察用にしてみてください。
クリームケースのまま飼育と観察ができます。
エアレーションも濾過も不要です。
エフィラが出たら別の容器に移してください。これも同じようなものでかまいません。
予め作ってあった人工海水を容器に入れて、エフィラをスポイトで吸い取って移します。
残ったプラヌラがほぼ全部ポリプになったら餌をあげましょう。
孵化したブラインシュリンプは角に集まっているので、それを小さなスポイトで吸ってポリプやエフィラの飼育容器に入れます。
本当は、ブラインシュリンプは濾したほうがよいです。孵化した水は汚れているためです。
ブラインを投入したら4時間後に換水します。
ブラインシュリンプは孵化したては栄養豊富ですが、日にちが立つと大きくなってしまう上に栄養価が下がります。給餌には孵化したて~1日までのものを与えるようにしてください。
こうしてブラインは無駄が出てしまうのですが、これは別の壜などに入れておくと(海水)、アルテミア(ブラインシュリンプの正式名)の飼育も楽しめます。
卵からにゅ~っと生まれます。
大きくなったアルテミア
アルテミアじゃなくって、エフィラがどうなるのかを教えてくださいとメールがきたので、加筆します(そりゃそうだ(笑))
遊離したエフィラは別の容器に入れてください。
できれば、1.5L~2Lのペットボトルで飼育容器を作ります。半分くらいを水平に切って2つにします。
上の部分をさかさまにして(キャップ部分が下に来るようにして)下半分にさします。
チュープの先にストローを付けたものを差し込みます。
ストローの先はキャップ部分に着くようにします。
エアストーンは付けずに大きな泡で水流を生みます。また、細かい泡だと大きくなってきたクラゲの傘に入ってしまい、泡が入ると傘に穴が開いてしまうので、NGなのです。
後日作った写真をアップしてみます。
エアーはポコポコとした気泡が1秒に3回くらい出るようにします。
水族館のバックヤードではビーカーにエフィラを入れてぷくぷくしています。
餌はブラインシュリンプです。
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