理論上、クラゲはポリプさえ維持できれば、永遠にクラゲを飼い続けることができます。
しかし実際には、その維持が難しく、特にヒドロ虫綱のクラゲはせっかく伸びたストロン(※)もそのまま枯れてしまったりします。
※ クラゲの無性生殖での殖え方は種類によって異なり、ヒドロ虫綱のクラゲは受精卵がプラヌラ幼生となって海中に泳ぎだし、どこかに固着してストロンと呼ばれる糸のようなものを伸ばします。ちょうど植物の地下茎みたいなイメージです。そこからやがてポリプが生えてきます。それとは別にクラゲ芽と呼ばれるものも出現して、遊離してクラゲを出します。
カミクラゲは春になると各地で大発生するので、「春を告げるクラゲ」などと言われることもありますが、そのポリプはまだ誰も見たことがないのです。研究室や水族館で、受精卵は採れるのですが、ポリプに変態させることが非常に困難で未だ繁殖に成功した人はいないクラゲです。
もちろん、野外でもポリプは発見されていません。
個人的には、タマクラゲとムシロガイ(※)のような共生関係を築いている生物がいるのではないかと思うのですが、クラゲは毎年たくさん発生するのに、ポリプが見つかっていないというのはなんとも謎ですね。
※タマクラゲとムシロガイについては「タマクラゲとムシロガイ」「タマクラゲとムシロガイ 2021」などをご参照ください。
そんな未解明なことが多いクラゲの中でミズクラゲは研究が一番進んでいるクラゲです。
クラゲといって思い浮かべるのは多くの人がミズクラゲだと思います。
このクラゲのポリプの飼育は簡単です。
もう一つ、飼育が簡単なクラゲのポリプがあります。それはサカサクラゲ。サカサクラゲは温かい海域のクラゲなので関東近海では見ることができませんが。きらら舎では以前に入手したポリプをもう何年も維持しています。
クラゲを出す誘導もある程度はできます。
サカサクラゲは何年飼育していても、老化を感じません。グリーンヒドラと同じように、無性生殖で殖えた個体はテロメアがリセットされるのではないかと考えてます。
これはプラヌロイドに原因があるのかも!
プラヌロイドで殖えるクラゲ(鉢虫綱 根口クラゲ目)のポリプをできるだけ多く飼育して比較すれば何かわかるのかもしれませんが、サカサクラゲの他には、タコクラゲ、エビクラゲ、エチゼンクラゲ、ビゼンクラゲ、スナイロクラゲ・・・。
エビクラゲのポリプは今だ発見されておらず、その他のクラゲも家で飼うようなクラゲではないので、なかなかポリプ入手も難しい・・・。現在はサカサクラゲとタコクラゲでのみ「老化」について観察しています。
ちなみにタコクラゲポリプから出るエフィラを見ても老化の感じはありません。
話が脱線しました。今回はミズクラゲのお話でした。
ミズクラゲのポリプ。これは老化するような気がするのです。
何年も維持しているポリプはだんだんクラゲを出さなくなりました。出ても少しだったり、小さかったり、奇形が多かったり。これは無性生殖で殖えたポリプのテロメアは元のポリプのものを引き継いでいるのではないか。つまり老化しているのではないかという推測です。
それで、できるだけ毎年、新しいプラヌラを入手しています。
昨年(2021年)のプラヌラは、ポリプになる前にエフィラを出したものも多くありました。一般に言われている 受精卵→プラヌラ→ポリプ→エフィラ(クラゲ)という順番ではなく、ポリプ時代をショートカットしています。
今年も採集地が近いので、ショートカットするものも多いかと思われます。
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