カフェのワークショップでウニを受精させて、卵が分裂して幼生になり、それを飼育してウニにする・・・。
うまくいけば、そのウニを水槽で飼育する・・・。
わたしは発生学を学んだことはなく、高校でウニの発生実験をしたこともなく、すべて自己流です。あくまでも趣味の一環で行っているワークショップについてのまとめです。専門的な知識を得たい方はきちんと書かれた論文やWEBサイトをご覧ください。
写真は以前のものも使っています。
写真がまだない部分には、後日、撮影したものを追加していきます。
初稿:2020年2月27日
加筆:2021年6月23日
ウニのシーズン
何度かきらら舎ノートにも書いていますが、ウニにはシーズンがあります。
バフンウニは2~4月。
エゾバフンウニは6~8月。
ムラサキウニは6~8月。
アカウニは9~10月。
だいたい、この時期に精巣・卵巣に精子と卵ができます(年や土地によって若干のずれがありますのであくまでも目安です)。
この時期に成熟したウニを採取して、精子と卵を採取します。
しかし、2021年。ウニ採集にいく余裕がなかったことと、昨年買った実験用ムラサキウニが死んで到着したので今年は別の採集者さんに注文をしました。
すると、今のシーズン、身が詰まっている(精巣・卵巣が成熟している)のはバフンウニだというのです。さらに、ムラサキウニは10月で、昨年も10月に実験用ムラサキウニを出荷し、実験も成功していると。
地域でこれほどまでに違いがあることに驚きました。
精子と卵の採取
以前は口器を取り外してKClを注入し、筋肉を収縮させて放精・放卵をしていました。
実験後のウニは骨格標本にしていました。
しかし、殺さなくても放精・放卵をさせることができるようになりました。
2020年2月26日の実験から、アセチルコリンを採用しました。
KClよりも放精・放卵のタイミングが若干遅いようです。
輸送で若干弱っていたウニ・・・
口器が沈下してしまっています。
しかし、アセチルコリンを注射した途端、出べそのように口器が盛り上がりました。
アセチルコリンで放精・放卵させたウニはそのまま水槽へ入れて飼育することができます。
発生と成長の不思議
採取した精子と卵(らん)は確かに生きているのですが、これは生物とは言えないんだな・・・・・そんなことを思いながら、タブレットの上の未受精卵が入っている水滴に精子を入れます。
未受精卵はまん丸くて縁がくっきりしているものが健康な卵です。
精子は卵がないと、やみくもに動いてエネルギーを消耗して死んでしまいます。
卵があると、その位置をちゃんとわかって、まっしぐらに泳いでいきます。
1つの精子が卵に突入すると、その部分から受精膜が上がります。他の無数の精子たちは、受精膜のまわりでうごめくことしかできません。
精子の核と卵の核が融合し、受精の成立です。
受精卵
先日、ウニの研究者である馬渕誠一先生がカフェでスライド上映をしてくださった時に、精子が卵をみつけて突入するのではなく、卵が精子を引き寄せて取り込むのだというようなお話をされていました。
奥深いですね。
とにかく、この瞬間が本当の命の誕生です。
卵は、やがて2つに分かれます。
2つに分かれた線の上と下をそれぞれ動物極、植物極といいます。2つがそれぞれ縦に分裂して4つの細胞になりました。この4つの細胞にはウニになるすべてのモトが均等に入っているのだそうです。
だから、4つを切り離すと、4つのウニになるそうです。
4細胞期
4つの細胞が今度は横に割れて8つの細胞になりました。この8つの細胞では、上4つと下4つで含まれるウニのモトが異なるので、8つに分けてもウニにはならないそうです。
ならば、上下で2細胞ずつ4つに分けたらどうなるのでしょうね・・・・・
多分4つのウニになりそうですね。
8細胞期
16細胞期
第3卵割で、細胞は16になります。割れ方は、動物極側の4つの細胞は縦に割れて8つになります。植物極側の4つの細胞は横に割れて大きな4つの細胞と植物極に近いほうの小さな4つの細胞に分かれます。それぞれ中割球、大割球、小割球と呼ばれます。
こうして、32、64、128と、受精卵は倍々と細胞を増やしていき、やがて桑の実胚と呼ばれる状態になります。この時には細胞は周りに移動して内部には卵割腔という空洞ができます。
桑の実・・・ラズベリーを想像していただけば遠くありません。あんな感じに似ているので、そう呼ばれています。
その後、周りに集まった細胞から繊毛が生えてきます。胞胚期です。繊毛によって受精膜の中でくるくると回り始めます。そして・・・受精膜をやぶって外に泳ぎだします。孵化です。
胞胚
容器の外側からライトを当ててルーペでみると、丸い黒っぽい粒がたくさん動いているのが見えます。
原腸胚
原腸の貫入が始まり、だんだん伸びてきます。
貫入が始まった部分が肛門となり、伸びているのは消化器官。
やがて、反対側に到達して口になります。
この時期はまだ口ができていないので、餌は不要です。
プリズム幼生
プリズムとは三角形のこと。
4腕プルテウス幼生
塩分濃度が高いと、腕(角みたいな部分)が短くなりますが、濃度を調節すると、縮まっていた腕はだんだん伸びていきます。
上の写真では1本だけ腕が短いようです。
最初は細い二等辺三角形をしていますが、ここからだんだん体が角ばってきます。
腕はまだちょっと短いですね。
真ん中の丸い部分が胃です。餌のキートセラスを飼育容器に入れ、それを食べることができた個体は胃がキートセラスの色になります。
空腹時は透明です。
先端から腕の先に向かって伸びているのは骨です。
6腕プルテウス幼生
奥に2本腕があり、手前には最初腕の下横から腕が伸びてきます。
8腕プルテウス幼生
写真では手前の腕2本がピンボケしていますが、8本の腕があります。
体もだいぶ丸くなってきました。
受精発生実験キット(試験的販売)、ポケット飼育キットの詳細と飼育方法は、バフンウニ受精実験キットをご参照ください。
コメントを残す