【ギンカクラゲ/銀貨海月】
ヒドロ虫綱
花クラゲ目
ギンカクラゲ科
ギンカクラゲ属
学名:Porpita porpita Linnaeus, 1758
英名:Blue Button
2023年11月19日(日)
一昨日、天気図の等圧線の幅が狭く、海側からの風が強いことが予想された中、きらら舎生物部メンバーが海に行くというので、「いいものが打ちあがっていたらいいね」と思っていたのですが・・・・・打ちあがっていました。
ギンカクラゲです。
アオミノウミウシの餌でもあります(笑)
アオミノが好きなので、そっち側の目線になってますw
このクラゲをゲットできた人はたいてい、打ち上げられていたものを拾っていて、水族館でも同様で、さらにそれを水槽で長期飼育することは困難とされています。
生物部メンバーが18日(土)に、このクラゲをゲットして、しばらく観察していたら、雪のように何かが降ってきたといいます。
その後、「降ってきたモノ」を届けてくれました。
少し光の当て方を変えて撮影しています(モバイル顕微鏡Anatomy)
これがギンカクラゲのメデゥーサ(クラゲ成体)です。
ヒドロ虫綱のクラゲとわかりますね。
あの銀貨は、ポリプの群体です。カツオノエボシと同じですね。
魚など流れに負けずに泳げるものは「ネクトン」、
水の底を歩き回る生活をするものを「ベントス」、
水の流れに逆らって泳ぐ力はないものを「プランクトン」
と呼びますが、ギンカクラゲやカツオノエボシは、海面を風に吹かれて揺蕩う「ニューストン」です。
このクラゲが成熟して有性生殖でプラヌラが生まれ、ポリプになって群体になると、あのギンカクラゲの形になるらしいのですが、まだ、それができるところを見た人はいないのだそうです。
ポリプ群体はカツオノエボシ同様、それぞれ専門の役割を持っていて、円盤は浮き的なもので、円盤の下面中央に大きな1個の栄養個虫があり、これの周囲を多数の小栄養個虫やラゲ芽を出す生殖個虫が取り巻いています。
雪のように降ってきたのは、この生殖個虫が作ったクラゲ芽がクラゲとなって遊離したものです。クラゲ芽は房状になっているといいます。それらが一斉に遊離するのですから、それは大量になりますね。
円盤の周りの青いきれいな部分(たまに黄色いものもある)は「感触体」(餌を捕まえる)で、刺胞を備えた短い枝があります。
(『日本クラゲ大図鑑』( 平凡社 2015/9/28)では、三宅 裕志 教授は感触体とは呼ばずに指状個虫としています)
きらら舎生物部メンバーも、このポリプ群体を長く維持することはできませんでした。溶けちゃったそうです。もともと、強風で海岸に打ち上げられていたものなので、大抵は弱っていますしね。
水族館でも長く維持できないと書いてあったし、海の生簀みたいなところだったら飼えるのかな・・・・・誰かやってくれないだろうか(笑)
夜、お酒を片手に妄想にふけります。
なぜ、水族館でも群体を飼育できないのか。水槽に入れるとなぜ短期間で死んでしまうのか・・・
移動することで酸素が供給される ➡ 移動しないと酸欠になる
とかね。
2023年11月20日(月)
昨日は全く動かず、ウニ原腸胚みたいな繊毛もないので、飼育容器(というか、いただいたままの100円ショップのウォーターボトル)をしばらく静置すると、みんな沈んでしまいます。
時々ゆっくり回して、沈んだきりにならないようにしていました。
やらなければいけないことがたくさんあった日曜日はギンカクラゲで費やされました(笑)
いろいろ、ネットで調べてみても有力な情報はありません。
蔵書の『日本クラゲ大図鑑』( 平凡社 2015/9/28)には、ある程度成長したクラゲの写真が掲載されています。三宅 裕志教授の解説だと、クラゲ芽から遊離したクラゲは、これから向かい合わせに触手が2本伸びてきて、その両方、または片方だけが有頭であること、放射管は8~16本と成長とともに増えること、生殖巣は口柄上に形成されると、ありました。
書かれているということは、生殖巣が形成される(成熟する)までは飼育ができていたのだと思いますが、どうなんでしょう。
↑
これについて、成熟個体の写真は採集地データがあったので、採集個体でした
飼育できていたということは、図鑑中の文章からは見つけられませんでした。
千葉県立中央博物館分館 海の博物館で刊行されている「海の生きもの観察ノート 11」には、口ができたクラゲ(触手はまだない)と、若いポリプ群体の写真が掲載されていました。
いずれも鴨川市内浦で採取されたものとあります。
そして、成熟個体とプラヌラはまだ発見されていないのだと。
なぜでしょう?
若いクラゲはみつかっているのに成熟個体がいないのは、沖か深海に移動してしまっているとも考えられます。
ただし、『日本クラゲ大図鑑』( 平凡社 2015/9/28)では、クラゲは恐らく肉食ではなく、共生藻の光合成で得た栄養で成長すると書いてあります。深海に移動したら共生藻が生きていけないので、深海説はちょっと矛盾します。
もちろん、成熟すれば口ができるので、何かを食べているのでしょうが、その餌についての情報もみつけることができませんでした。
これから、進路を決めるクラゲ好きの子供たちには、ぜひギンカクラゲの研究をしてもらいたいです(笑)しかし、それがどう、人間に役に立つのかを主張できないと、研究費をもらえなさそうではありますが。
クラゲにはカミクラゲのように、いたるところで目撃されながらも、研究室でポリプを作ることができないクラゲもいます。個人的には、これはタマクラゲとムシロガイのような共生生物がいるのではと思っていますが、それにしても、これだけたくさん採集できるカミクラゲで、その共生生物が特定できていないもの謎なので、この推論は違うのかもしれません。
話はギンカクラゲに戻り・・・・・
とりあえず、いつまで維持できるかわかりませんが、せめて、次の土曜日のウニの日までは維持して、お見せできるといいなあと思い・・・
今日は、飼育容器をきちんと用意しようと思います。
クラゲのエフィラのようにぷくぷく水流にするか、あるいは、ウニのプルテウス飼育のようにプロペラ水流にするか・・・どちらがいいのだろうと迷いましたが、ウニではなくてクラゲなのでぷくぷく水流を採用しました。
少量だけ、ポケット飼育してみることにしました。
その前に顕微鏡で観察すると。
傘が一回り大きく膨らんでいることがわかります。
上の写真で、多分上側に口が開きそうです。茶色の粒は共生藻(褐虫藻)です。
下の写真は上(または下)から見ています。4つの角にあるものが放射管と思われます。
少しづつ拍動が始まりました。
2023年11月22日(火)・・・遊離から3日目
口が開きました。
2023年11月25日(土)・・・遊離から7日目
口が開いたので、「恐らく肉食ではない」という『日本クラゲ大図鑑』の説明を受けて、まずはキートセラスを入れてみました。同時にLED照明もガンガンあてています。
その結果・・・・・キートが増殖してしまい、水質悪化させそうなので、何度か換水をしてみました。
それでも、我が家のキート恐るべし!どんどん殖えるので、ほぼ全換水。
海外のWEBサイトで成熟個体とポリプからの群体形成のイラストを見つけました。
著作権の関係上、掲載はできませんが、成熟個体はだいたい想像どおりですが、若いポリプの形は見たことがない謎なイラストです。
写真はまだ見つけられませんが、少しだけ解明できました・・・とはいえ、この未熟クラゲはどこまで育つのだろう・・・
2023年11月30日(木)・・・遊離から12日目
全換水したものの、若干入る飼育水に含まれるキートが殖えているのか、クラゲがどんどん死んで水質悪化させているのかわかりませんが、毎日換水を強いられています。
そんな中・・・・・
少し歪になってしまっているものの、口柄と思われるものと、個体によっては、触手ができ始めたものもいました。
シオミズツボワムシS型を入れてみましたが、捕食できる様子はありません。
ただ、口柄の付け根が胃腔だとしたら、色が着いています・・・・・
2023年12月4日(木)・・・遊離から16日目
土日が忙しかったので換水ができず、やや心配でしたが、生きていました。
左上が口柄で、右下は触手です。
左にも触手らしきものができ始めました。
2本あるという触手は同時にできる(生える)のではなく片方づつということがわかりました。
モバイル顕微鏡で光の当て方をいろいろ変えて撮影してみました。
体内の茶色の粒は褐虫藻です。
口柄の付け根に胃があるのが、普通なのですが、わずかに色づいているのは、何かを食べているのか(胃に何か入っているのか)、褐虫藻なのかはわかりません。
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