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きらら舎生物部@蚕組 始動します!

 

もともとカフェで生物系のワークショップを行った時には、なかなか参加者はありませんでした。

理科室カフェで微生物観察会を予定していた日。開店時からモニタ付きの顕微鏡で当日のサンプルの一つであったゾウリムシの顕微鏡映像をライブで映していましたが、いい反応はありませんでした。

それでも少しづつ生物ファンが増えていきました(ありがとうございます)。

 

それで、とうとう今度は「カイコ」。

まずは何度か飼育して、夏休み前に生物部(※)で扱うことにします。

生物部での扱いと配布日、その他詳細はこのページ末に記載しています。

 

4/29 孵化3日目 1齢

 

これは4/27(土)に生まれた子(生物部@める部員から譲り受けました)。

 

写真は3日目です(生まれた日を1としています)。

1日目はもっと色が黒かったので、少しづつ薄くなっているようです。

 

 

カイコの飼育ノート

 

カイコは卵からふ化して繭を作るまでに4回の脱皮を行い成長します。
脱皮を行う時期のことを「眠(ミン)」、
脱皮してから次の眠になるまでの期間を「齢(レイ)」と呼びます。
4回目の脱皮を行ったカイコは、5齢となり、これが終齢で、その後、繭を作り、その中で蛹となります。
羽化は繭の接着剤であるセリシンを溶かして、溶けた穴から出てきます。
穴が空くと糸を取れないため、糸を取る場合は蛹が入ったままで行います。

 

飼育環境

タッパにキッチンペーパーを敷いたものや紙箱。

温度 25℃、湿度70~80%

 

桑の葉か人工フード

 

 

カイコの一生

孵化

稚蚕期1齢

成長は気温に左右されますが約3日間、葉(または人工フード)を食べます。
葉は1枚まんまを与えることで葉自体も長持ちし、飼育容器内の保湿にも効果的です。

4/30 孵化4日目 1齢

4/30 孵化4日目 1齢

 

3日間くらい食葉し、その後、眠という時期に入ります。
4日目で、そろそろ眠のタイミングですが、まだ餌を食べているものもあります。

 

5/12 孵化5日目 2齢

5/12 孵化5日目 2齢

 

眠に入る半日前くらいから葉を食べなくなります。葉がしおれないように湿度70%を保つようにしていましたが、脱皮の際には水分が少ないほうがいいので、葉を食べなくなったら容器のふたを開放しておきます。
葉を食べていないものもいるので、掃除も兼ねて湿った床材(湿らせたキッチンペーパー)をはずし、少しだけ湿った状態のものを入れ、新しい葉を追加し、フタを開放しました。

胸部背面部から皮膚が破れて脱皮が始まります。

 

稚蚕期2齢(孵化後5~7日目)

稚蚕期3齢(孵化後8~10日目)

壮蚕期4齢(孵化後11~15日目)

 

 

壮蚕期5齢(終齢)(16~22日目)

餌をたべなくなり、体がやや透けてきたら熟蚕。熟蚕になると繭を作る場所を探し求めて、這い回るようになります。

 

営繭

繭を作りはじめます。この時に大量に尿を出し、少し縮みます。
そのままにしておくと桑の葉を丸めて、その中に繭を作ってしまいますので、熟蚕になったら蔟(まぶし)と呼ばれる人工のものを用意して、これに移します。
この作業を上蔟といいます。

営繭時の適温は22~23℃ 、湿度70%以下になるようにします。

上蔟から約15時間後に排尿をします。蔟には新聞紙や吸水性のよい紙を使用して、この排尿対策とします。

 

卵から孵化したもの以外に、4齢の蚕が2種類いました。

予定では25℃で5/15に営繭開始くらいだったのですが、5/12に外出から戻ると4匹が飼育箱の隅に繭を作り始めてしまっていました。

 

2匹はかなり出来上がってきていたので、そのままにし、2匹は作りかけていたものを無理やりはがして、トイレットペーパーの芯を半分に切ったものの中に放り込みました。

 

すぐにその中で再び繭づくりを始めました。

 

里山黄金という黄色い繭を作る種類の繭。

よく見ると、まだ中で内壁を整えているような動きをしています。

 

養蚕用語

営繭(えいけん) :蚕が繭を作ること
吐糸(とし)   :蚕が繭をつくために糸を吐くこと
蔟(まぶし)   :蚕が繭つくるためのもの
上蔟(じょうぞく):食桑をやめ営繭にかかろうとしている熟蚕を蔟に移す作業
化蛹(かよう)  : 幼虫から蛹に変態すること

 

羽化(孵化後41日目くらいから)

カイコの繭はフィブロインとセリシンという成分でできています。フィブロインが絹糸の成分で、セリシンがちょうど接着剤の役割をして繭を形成しています。
羽化はカイコガが中からセリシンを溶かして繭に穴を開けてそこかで出てきます。

セリシンは・・・・・抗炎症作用、皮膚癌抑制作用、紫外線による皮膚障害の抑制作用、便秘改善作用、ミネラル吸収促進作用、大腸癌抑制作用、血糖値抑制作用、抗酸化作用、保湿作用、美白作用、接触皮膚炎(アトピー性皮膚炎)抑制作用、動物細胞増殖促進・保護作用・・・・・と素晴らしい効能を持つものだということが近年の研究で明らかにされました。(参考文献/加藤範久「セリシンの生理機能の解明とその応用」)

 

カイコガ

 

 

羽化といいましたが、繭から出てきたカイコガは飛ぶことはできません。
メスは300~600個の卵を持っているので、オスに比べて腹がぷっくりとしていて、触覚は小さ目です。

メスはオスを誘うフェロモンを尾部の誘引腺から発し、オスは触覚でそれをキャッチします。
そのため、オスの触覚のほうが大きいのです。

成虫になるともう餌は食べません。口がないのです。成虫はわずか一週間ほどの命です。
成虫になってから一度だけ尿を飛ばします(周りが汚れないように箱の中に入れておきます)。

カイコガは飛ぶことができない蛾です。オスはメスのフェロモンをキャッチすると、翅を高速で動かしながら、もたもたあるいてメスのところまで移動し、交尾をします。一度交尾をするといつまでもそのままなので、3時間位たったら手で2匹をを捻る様に引っ張ってはずし(割愛)、オスを隔離します。
射精は交尾してから15~30分後くらいで起こるため、あまり早く引き離さないようにします。

メスは紙を敷いた丸い箱の中で産卵します。交尾の後は暗くすると約8時間に最も多く産卵し、1日で産卵し終わります。

 

ここで産卵した卵の孵化を調節するためには「浸酸」という作業が必要となります。産み落とされた卵は時間の経過とともに色が変わりますが、これをホルマリンや塩酸などを使って途中で止めるわけです。産み落とされてすぐに浸酸した即時浸酸卵は25℃を保ては、10日後に孵化します。
浸酸のタイミングと温度管理で孵化の時期をいろいろと調節ができます。

ただし、一般ではホルマリンなどを入手することができませんので、卵を補完する場合は越年卵にします。

これは産卵し終えるまで産卵させて、卵は風通しの良い、涼しい所に保管します。
冬(12月末頃)になったらビニール袋に入れて冷蔵庫で2.5℃を保ち、春(3月末)に中間手入れという作業を行います。

気温15℃くらいの場所に約3日間おきます。これによって胚子の発生が進みます(stage16まで)。その後再び冷蔵して、孵化させるタイミングで冷蔵庫から出します。

 

蚕組の活動

夏休みの宿題として、また、一経験として飼育してみたい方のご参加をお待ちしています。

飼育は長期に亘ると負担になるので、2週間だけ蚕の世話をします。
日々大きくなり、脱皮も観察できますので、毎日撮影してください。

配布日 7/6(4令2日孵化から13日目)、7/13(5令4日孵化から20日)

飼育してみたい方はメールかツイッターDMにてご連絡ください。
今回の蚕は黄白という種類です。
オスが白色・メスが黄色の繭を作る限性品種(限性黄繭)です。

頭数に限りがありますので、先着順とします。
1名につき5頭。当面の人工フードをお付けします。飼育容器はプラケースとなります(付属しています)。

人工フードは足りなくなる可能性がありますが、途中から桑の葉に切り替えることもできます(逆はできません)。
桑の葉はマルベリーという品種で園芸店などで販売されています。
大きめの苗でないと、お持ちいただいてから営繭までの餌としては足りないと思いますので、当面人工フードで飼育しながら、桑の樹か人工フードを購入されることをお勧めします。

 

・人工飼料を切ります(冷蔵庫から出して切って、残りを冷蔵庫に戻します)。

・底の紙(キッチンペーパー)ごと飼育箱から出します。

・新しい紙を敷きます。

・餌を配置します。

・蚕を容器内に戻します(この時、後部の脚で紙などにしがみついていますので、体の後部を持ってはがします)。

・記録撮影をします。

・熟蚕となったら、蔟を用意し、上蔟します。トイレットペーパーの芯を半分にするのが楽です。
(トイレットペーパーの芯を

 

熟蚕・営繭の予定は7/17~19ですが、できるだけ温度を下げて博物ふぇす時に営繭しているところを見せられるようにして展示します。

 

もし、お持ちになった繭がすべて白色(メスの繭)、または黄色(オスの繭)の場合は博物ふぇす時に交換できたらします。
博物ふぇすに間に合わない場合はその後のカフェ営業日にお持ちくだされば交換します。

Categories: 生物・植物室

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かよこ さとう ()

Website: https://kirara-sha.com/

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