先日、クラゲ先生の一言から、ミズクラゲ実験を思い立ち早速始めたことは、「ミズクラゲ実験」に書きました。
ミズクラゲポリプを飼育し始めた大きな理由は、「ポリプは永遠に不滅である(と思った)」からです。クラゲ(メデューサ)には寿命がありますが、ポリプは無性生殖で殖えるので寿命がないという意味。
しかし、実際にはポリプも老化します。老化したポリプからよいエフィラは生まれないのです。
ベニクラゲがクラゲからポリプへ逆戻りをすることを「若返り」というのはまさしく、テロメアの修復も行われるのですが、ミズクラゲのポリプは殖えたとしても老化はしているのです。
ミジンコはメスだけで殖えます。環境が悪化するとオスを生んで有性生殖して耐久卵を作ります。
シオミズツボワムシも同様ですが、環境が悪化しなくてもオスが生まれます。オスには消化器官がなく、交尾のためだけの人生です。
(ワムシについては「シオミズツボワムシと淡水ワムシ」参照)
ミズクラゲ実験やワムシ飼育で、無性生殖と有性生殖について考えることが、このところ多くありました。無性生殖で殖えることができるのなら、それでいいんじゃないの?って思ったわけです。ミジンコの耐久卵には意味はありますが、それだって、クマムシの樽状態になる能力を身につける方向に進化すれば済むのではと考えました。
有性生殖の必要性とは何か。
クラゲのポリプが老化することだけがその答えなのか・・・・・
文系人間なので、些細な疑問を抱くと調べずにはいられません。理系脳がないので、推測ができないのです。
みつけた!
「生物が生殖行為を絶ってゲノムが固定されると、進化の競争の過程で敵対する種に追いつかれ、間もなく制圧されてしまう」(ニューヨーク州コーネル大学の神経生物学者ポール・シャーマン博士)
この理論は「赤の女王仮説」と呼ばれているようです。
有性生殖の中でしか進化はしないということなのでしょうか。有性生殖は異なったゲノム間の混ぜ合せ、つまり減数分裂時の非相同染色体のランダムな分離と相同染色体間の組換えをします。無性生殖で、そうした減数分裂がなくなったら個体間のゲノムの混ぜ合わせが無くなり、ある個体のゲノムはそのまま子供世代に引き継がれます。
やはり、有性生殖のほうが進化しやすいのは確かです。
しかし、一概にそうともいえないという記事を見つけてしいました。
2010年1月29日発行の「Science」誌に掲載されたヒルガタワムシの実験です。
ヒルガタワムシにはオスが見つかっていません。動物界で唯一の「古代無性生殖生物」がヒルガタワムシです。
生殖行為を行わずに5000万年を生き延び、世界各地に棲息し、450種以上にも枝分かれして進化しているのです。線虫類など生殖行為をせずに繁殖するほかの生物の場合、数十万年で絶滅すると予想されています。
実験というのは、前述のシャーマン博士が同じくコーネル大学のクリス・ウィルソン氏と共に行った実験で、
ワムシは菌類寄生生物の脅威にさらされると自ら干乾し状態になり、風に吹き飛ばされることで身を守る。
その後で淡水に触れると息を吹き返す。
というもので、飛ばされる際に、菌に暴露していたとしても菌を残して飛び去れるのだそうです。
干乾し状態はちょっとクマムシの樽状態に似ています。クマムシほど無敵ではないにしろ、敵を振り切って「時間よ止まれのタイムカプセル」に入って人生をやり直しているのです。
それならテロメアはどうなるの?
もともととっても長いのか??
時間よ止まれ!はもしかすると時間は戻れ!なのか???
またまた。酒を呑みながらゆるい頭で考えて楽しいネタを拾ってしまいました。
それで、急にヒルガタワムシを見たくなりました。
見たいと思えばどこにでもいるのがヒルガタワムシです。さらにクマムシなどより見つけるのも簡単です。
今回は、孵化したばかりのメダカの飼育水を吸い取ってきました。
孵化した卵の殻を1つ拾います。
きらら舎初心者の方へ、おさらい
クラゲは有性生殖で受精卵ができ、やがてプラヌラ幼生となり、海中に泳ぎだします。
これが岩などに固着して変態し、イソギンチャクのような、ウミユリのような、ポリプというものになります。ポリプは無性生殖で殖えます。そしてポリプからクラゲが出ます。
ポリプから遊離したばかりのクラゲをエフィラ幼生といい、やがてメタフィラ幼生、そして稚クラゲ、クラゲとなります。
クラゲは他の世代と区別してメデューサと呼ぶことがあります。
しかし、必ずしもこの順序ではない場合も多くあるので、クラゲの一生とは言わずに生活史といいます。
水槽で飼育する場合、無性生殖で殖えたポリプを数個体購入したり、もらったりして始めることが多いため、殖えたポリプもそこから出たクラゲもみな同じDNAです。
コメントを残す